頂き物

□◇煙×鰐◇happy white day
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◇煙×鰐◇happy white day

「これ…」
「ん?」
「誕生日、だろうが」
お前、と小さく付け加え放り投げられた葉巻ケースを見て、スモーカーは苦笑った。

子供のとき、誕生日を祝われるのはなによりも楽しみで仕方なかった。
いつからか、祝われるのも億劫になり誕生日なんて人に教えた記憶ももうほとんどない。
たぶんに自分の誕生日を知っているのは同期のヒナとあとはたしぎくらいなものだと思っていたが…
「よく知ってたな」
「う、るさい…たまたま、耳に入っただけだ」
耳をほの赤く染め上げ、顔を逸らすそいつの仕草のなんと可愛らしいこと。
大の大人に使う表現でないことくらい理解しているが可愛いものはやはり素直に可愛いと思うのだ。
「ありがたくいただいておく」
「大事に使いやがれ」
「ああ…だが」
「っ、スモ…」
ケースを懐に、そして立ち上がりその男に近づきそっと抱きしめれば跳ね上がるそいつの肩。
居づらそうにもじもじと動くその体を自らの腕で拘束し、額に瞼に鼻先に、そして唇、口はし、頬、顎と口付けを施せばそいつの体から次第に力は抜けていくのだった。
「これもいいが…お前もほしいと、そう言ったらどうする?」
「っ…好きに…しろよ」
小さく呟く声は聞こえるか聞こえないかの本当に小さな囁き。
そんな言葉でも俺の耳はきちんとそのはき捨てられた言葉を回収し、体は即座に反応した。
まるでパブロフの犬だ。条件反射もここまで行けばまさしく犬である。

けれど、

「スモーカー、あんま、首、舐めんなっ…」
「ああ、すまんな」
首筋から漂う石鹸の匂いにうぬぼれを抱くのくらいいいだろう。
なんたって今日は「誕生日」なのだから。


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→叫び
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