ONEPIECE
□favorite thing
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ぎり、とクロコダイルは口にした葉巻を噛み締めた。
なんでこいつがおれの部屋で寝てるんだ。
心の中でそう毒づいてピンクの男を見る。
どうやって入った、などは既に愚問で聞くだけ無駄な気がして仕方がない。
クロコダイルはドフラミンゴを起こさないようにその傍らに立つと、男を見下ろした。
普段掛けているサングラスすら外して仰向けで、しかも大の字になって寝ている姿からは待ちくたびれて寝たのではなく、意図して寝たんだろうということが見て取れる。
クロコダイルは万物に渇きを与えるその右手を男の喉にかけた。
力を入れれば喉が締まって死ぬ。
能力を使えば身体から全ての水分が枯渇して死ぬ。
これ以上この男に煩わされたくなかったらどちらかを選ぶのが一番。
それなのに、クロコダイルの手は動かない。
動かせない。
「殺さねぇのか、鰐野郎」
ドフラミンゴの唇が動いた。
クロコダイルは憎らしげに唇を歪めた。
「いつから起きてやがった」
「クロコの手の感触した時から」
ドフラミンゴはそう言うと、フフフッと笑みを漏らして言った。
「おれ、クロコになら、砂にされてもいーかも」
「はぁ?」
トチ狂ったかてめぇは、とでも言い出さんばかりのクロコダイルに、ドフラミンゴは薄く笑った。
「だってクロコ、砂好きだろ?」
ドフラミンゴは目を細くして、囁く。
「お前の好きなもんになれるなら悪くねぇ」
その声はどこか優しくクロコダイルの耳朶を打った。
ふざけんな馬鹿野郎。
貴様が砂なんざ百年早ぇ。
そんな言葉が頭の中で浮かんでは消えて行く。
クロコダイルらしくもなく何の反論もできないままに、ドフラミンゴの口が三日月を刻む。
「なーんてな」
ドフラミンゴはそう言うと虚を突かれたクロコダイルの腕を掴んでベットに押し倒した。
「ま、一番は腹上死だけどなぁ」
フッフッと酷薄に笑ってドフラミンゴは言った。
「黙れ死ね」
クロコダイルは、一瞬先程の言葉を真に受けてしまった自分を心から恥じて、目を閉じた。
→後書き