オリジナル

赤と黒
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「この辺り、今俺の仲間の行動区域だからなんかあるとヤバいじゃん」
「そうなんだ……!」
クレアはさっきまで、この狼少年と普通に会話をしていた事を思い出し、今更ながら慌てだした。
「えっ?! どうしたんだよー。いきなり!」
「わ、わ、私、『狼男』としゃべっ、し、喋ってる!!?」
「なんだよ。今更そんな事言ってんのかよ……」
呆れるガロン。
まだまだ、頭の混乱中のクレア。
そんな彼女のバスケットと手を掴みある方向へと進み始めた。
「えっ? ど、どこ連れてく気?!」
「お前のばあちゃん所」




決して、祖母の家の場所を伝えた覚えが無いのにガロンはひたすらにある一定方向に進む。クレアはその行き交う景色が己の知っている祖母の家へと繋がる道で見る風景と同じなため、動揺が隠せなかった。
今、自分の手を繋いだ彼にこの動揺が伝わっているのだろうか。
だから、彼は間違えずに向かって行けるのだろうか。

ただ、今解ることは彼が私の知っている道を通っていること。

そんな事を考えている間に、いつの間にか祖母の家の前に着いていた。
「ほら、着いたぜ」
「あ、ありがとう……」
クレアは信じられないと頭の中を疑う。
ゆっくりと前に歩み寄るクレアの手をそっと話してやるガロン。
数歩歩いたと思ったら次はその場にクレアは、しゃがみこんでしまった。
「おばあちゃん……」
「……」
「おばあちゃん!!」
「……クレア」
クレアは立ち上がり、ガロンの方へ向かった。
「おばあちゃんは? おばあちゃんは何処へ行ったの?! それに……!おばあちゃんの家は? 家は何処へ行ったの!!?」

クレアが見たもの。それは変わり果てた祖母の家。誰ものかに壊され火を放たれたであろう状況下の中、唯一、祖母の家のポストが此処が祖母の家があったことを証明していた。

クレアは混乱と不安、苛立ちにガロンの胸を幾度か叩いた。
だが、女であるクレアの力ではガロンには通じず、その代わり、そんな彼女の様子を見ているガロンは心を傷めた。
終いには、泣き出すクレアにガロンはそっと抱きしめると胸に顔を押し当てて大きな声で泣き出した。

「何で! 何でなの?」
「……俺の仲間が……やったんだ」
「!!」
「俺が来たときはもう……」



ガロンが来たときにはもう、家の周りに彼の仲間が何時でも襲える体勢に入っていた。仲間の中で『変わり者』だったガロンはよく、おばあさんの家に遊びに来ていた。
そこを仲間の狼達が嗅ぎつけ、その人間・おばあさんを食らってやろうとしていた。「ばあちゃん! 俺と一緒に逃げよう……!」
だがクレアの祖母は首を横に振った。
「私はもう無理だよ。ガロン。この足じゃお前の足で纏いになってしまう」
「俺が背負っていくから!」
「早く行きなさい。彼らも、この家に隠し通路がある事を知らないみたいだから……」
「ばあちゃん!!」
「早くお行き!!」
「俺には、ばあちゃんに借りがある。ばあちゃんに助けて貰った恩を返してないよ」
昔、ガロンが群の狼達に暴力を受け瀕死状態のところをクレアの祖母に助けて貰った恩があった。




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