オリジナル

赤と黒
3ページ/9ページ

数分の沈黙後、何故か彼らは花畑の上に座り話し合いを始めた。
「えーと……。君は赤ずきんのクレア……」
「貴方は、狼のガロンさん……」
「「……よろしくお願いしまーす」」
互いに頭を下げ挨拶をする。
そんなお互いのおかしな行動に二人の顔に笑みがこぼれた。
「私……」
「ん?」
「母から、狼は『怖いもの』だって、『危険なもの』だって聞いてたから……。でも、ガロンさん聞いてたのと全然違うんだもん」
「あー。確かに、俺は変わってるかもなー」
「あの、ところで、どうしてこんな所にガロンさんが?」
「……逆に、その質問俺がしたいわ。因みに、俺は『此処』の住人なんで……」
「そうだよね。やだ、私ったら……。私はね、おばあちゃんの家にお母さんのアップルパイを届けに行くの」
「あっ! どうりでこっちの方向行くと、何か良い匂いがするわけだ……」
あーっと言って、ガロンはうなだれて、その直後彼から空腹を知らせるサイレンがなった。
恥ずかしさで顔を赤くするガロンと、目が点のクレア。
「ちょっと、待ってて……」
クレアは近くに置いたバスケットの中から落とさないようにと母が入れてくれたアップルパイ1ホールを取りだそうとしていた。

美味しそうに輝く黄金色の表面と甘いりんごと独特なシナモンの香り……。
狼であるガロンは、その素晴らしい香りと見た目に今にも自我を忘れて食いつきたくなるのを抑えた。
ついでにクレアがそれを出すのを止めさせた。
「えっ?」
「いや、本当に大丈夫だから。……それにそんなに綺麗に出来てるのに今此処でぐしゃぐしゃになるのもあれだし……。つか、これお前のおばあちゃんにだろ? ダメだってよそ者の俺なんかにあげちゃ……」
だが、食べたそうであるとクレアは思い、籠の中にアップルパイをしまうと再び中から小さなクレアの両手にすっぽりはまるぐらいの包みを取り出した。
「これ、どうぞ」
「へ?」
ガロンは手渡された包みを匂いをかいで確かめた。
「甘い匂いがする……」
リボンが結ばれた包みを開けてみると、そこには不格好ながら美味しそうに匂いがするクッキーが入っていた。
「私、不器用だから……このアップルパイみたいに……お母さんみたいにうまくできなかったけど、こんなので良ければガロンさんのお腹の足しにして下さいな」
「良いのか!?」
「ええ」
嬉しさを尻尾をばたつかせ表現した。
「俺、女の子からこういうの貰ったこと無かったからすげー嬉しい!!」
クッキーを一つ口に運び口にした。
ほのかに香る甘さが口を充満させる。
「どうかな……?」
「すごく旨いよ」
パクパクと口にクッキーを入れ食べ始める。
余程、おなかが空いていたのだろう。

口に入れた分を全て食べ終わると包みを再びリボンで結びつけた。
指についたクッキーかすを舌で嘗めとり立ち上がった。
「よし! クレア!」
「はっはい!!?」
クレアも立ち上がる。
「クッキーのお礼にお前のばあちゃんの所まで一緒について行ってやるよ」
「え?」




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ