オリジナル

赤と黒
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森から少し離れた所に、ある一つの煉瓦作りの家があった。煙突からは煙が上がり、家からなにやらいい匂いがしてきていた。
今日は週に一度、森の中にある祖母の家に母のアップルパイを届ける日であった。
私・クレアは、家の近くにある花畑で綺麗な花々を摘み花束を持って行こうと考えていた。


「クレアー!」
どうやら、母特製のアップルパイが出来たようだ。
できたてを大きな籠に入れクレアに持たせる。
「じゃあ、お願いね。くれぐれもあまり帰りが遅くならないように……」
そう言って、彼女の頭巾をかぶせてやった。
「もう、お母さん! 私だってもう15歳よ? そんなに心配しないで。ちゃんと帰ってくるから」
彼女は、言うなり母の元を離れた。
「気をつけるのよー!!」
「はーい!」
母に手を振り出発した。



森の中は人の気配はせず、森の住民たちの生活音が微かにするだけだった。
森に入る前より木々の傘のおかげで涼しく感じられた。
彼女はひたすら森を真っ直ぐ、祖母の暮らす家に向かった。

途中、綺麗な花畑を発見した彼女は道をそれて先ほど摘んだ花に追加していく。
「綺麗……」
手に一杯になった花に顔を近づけ匂いを
かぐ。
「凄いな」
突如、自分以外の人の声がして驚く。辺りを見渡しても人の姿が見られない。怖くなったクレアはその正体を探ろうと問いかけた。
「だ、誰!? 何処にいるの?」
少し間が開いた後、まだ見ぬ物体から返事が帰ってきた。
「君の後ろ……」
彼女は背後の者から逃げるようにして振り返った。
「!!…………えっ?」
彼女が目にしたもの。
母から注意されていた狼の尻尾、耳、の生えた…………人!?
驚き過ぎて言葉が出ずにいた。
「なぁ、お前……」
「やっ! 来ないで!!」
彼女は後ろに下がろうとした途端、何かにつまづきそのまま真後ろに転がってしまった。
「いったーい!」
「おいおい、大丈夫か?」
その謎の人物は近づき手を伸ばす。
「?」
その手が意味する事がクレアには理解できず、首を傾げた。
謎の彼も真似して首を傾げる。
「いやいや、ほら! 手出して」
言われたように手を出す彼女の手を掴み引き起こした。
頬を染めるクレアに謎の彼はにっこりと笑顔で返した。
「ありがとう……」
「どういたしまして」
自分の手を握る手を見て再び驚く。
(つ、爪が……!!)
明らかに人のモノで無いような爪の長さと鋭さに早く手を放して欲しい
と願った。
「な、なぁ……!」
「は、はい!!?」
「あ、えっと……」
クレアは一体何をされるのだろうかと恐ろしく身を震わせていた。
「……ちょっと待って。何でそんなに震えてんだ? あんた」
己の震えがいつの間にか相手側まで伝わっていた事に恥ずかしくなり赤面した。
「……んっもう! お前可愛いすぎだろ!!」
突如相手が抱きついて来たものでさらに顔を赤くした。
「あっあの……!」
「ん?」
「貴方一体誰なんですか……?」







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