オリジナル

□Master
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【少年と少女】






『少年と少女』

ある町の一軒の食堂で彼等の話は始まる。

店の一番奥のテーブルには、食べ終えた皿が積み重なっており、そのテーブルに向かい合って座る人影は2つ。少年と少女である。少年は頭にハチマキを付け、頭に小さな竜を乗せている。服装は、マントを羽織っており、説明しがたい。所々見える腕からはワイシャツか何かを腕で捲り、捲ったところから、手の甲にわたり、端を黄色く縁取られた黒い布を巻いていた。 少女はというと、頭に魔女のような大きな縁の黒い帽子を被り、上半身は肩だしでミニスカの黒装束を着ていた。
彼女は口に運ばれてくる料理を進めていく。それを眺める少年……。
「ちょっと、食べ過ぎじゃない?」
少女は怪訝な顔をして言い返した。
「あのね〜、私はあんた達と違って魔力を使わないといけないの! だから、食べないと体が保たないの!」
「コラコラ、喧嘩しないの!」
突如、少年の頭の上に乗っていた小さな竜が話した。
「でも、竜天兄〜」
「でもじゃないよ! ディア。それに、アイリッシュ!」
突如、竜は飛び上がり、机に降り立った。机に広がる皿をみてため息をついた。

「アイリッシュが、魔力を使うために食事でエネルギーを蓄えないといけないのは解った。……だけどね、お金もかかってることも考えないといけないよ。それに!僕は、二人が仲良くしないと元の姿に戻してやんないよ!!」
少女改め、アイリッシュは機嫌を悪くして腕を組み、背もたれにもたれた。竜改め、竜天は少年、ディアの頭の上に戻った。しばらくすると、外の方が騒がしなくなっていくのを感じられた。
次第に、音はこの食堂に近づいていた。ディアは次第に何かを察するかのように、ドアに目をやった。
すると、ドアがいきなり開き外から二人の男が入ってきた。
一人は腹の辺りから血を流し、ぐったりとしていて、もう一人の男が支えていた。店の亭主は驚いて、近づいた。
「大丈夫かい? どうしたんだい!」
「は、早く! 早く逃げるんだ!」
「!? いったい、何があったんだ!」
すると、男が状況を説明しようとした途端、男の口から血が流れ始めた。
亭主は驚くと、たちまち、男の後ろに少し背の高い男が立っていた。前にいた男は倒れへん亭主の前には右側の前髪だけ垂らし、首を金属の板でプロテクトし首に大蛇を従えた大男が立っていた。
「何を、そんなに怯える?」
亭主は腰が抜けその場に倒れ込んでしまった。

「どうか、どうかお助けを!!」
亭主はどうにか逃げようとするが、力が入らず後ろに進まない。店の中は緊張の中、その光景を見ているしかなかった。
男は、亭主に近づき頭をわし掴みした。亭主は何とも言えない叫びをあげた。ディアは、机から立ち上がり、男の方へ机にあったナイフを投げ放った。
男はそれに気づき咄嗟に身をかわした。男の頬には一線の赤い線が入った。
男はナイフの投げられた方向をにらみつけた。
「何だ? 坊主……?」
ディアは、アイリッシュにマントを預け、男の所へ向かった。
「此処、どこだか解ってる? 食事をする場所……そんな場所でのマナーぐらい解るよね?」
「黙れ、ガキが……。此処をどう使うなんて、客の俺の勝手だろ?」
「ガキか……。おじさん。今から、そんなガキに痛い目見ても知らないよ?」
周りで見ていた一人の中年男性が、二人のやり取りを止めに来た。
「おっおい!? 坊主、そんな事言っちゃ……」
ディアは、男性が何か云おうしたことを手を男性に向けることで制止の意思を向けた。
「此処は何だから、外に出ませんか? 他のお客さんもいらしゃいますし」
ディアは、そう言い、ドアの方へ向かう。だが、そこに大男の一声が入った。

「俺は、別に此処でも良いが?」
「俺が困るんだよ……」
「ん?!」
ディアはそっと大男の方に振り返り瞳を見開き、静かに冷たく笑った。
「竜兄、良いよ。そろそろやろうか……」
そう言うと、竜天はアイリッシュがいるテーブルからディアにめがけて、光玉を放った。
光玉はディアに当たると周辺を煙が覆った。
突如、何処からともなくドアに向かって風が吹き、その拍子にドアが開き煙は外に流れそこに青年の姿を写し出した。
青年はそっと閉じていた目を開いた。
「コレで文句言えないだろ? おじさん?」
すると大男は目に手のひらをやり上を向いて笑った。
「はははっ! 面白い……!では手加減はいらないようだな……」
すると、男は右腕を斜め下に伸ばし大蛇をはわせ右手に大蛇の頭が来ると、たちまち、一本の大剣に変わった。
男は、それを一回しさせ青年、つまりディアに刃先を向けた。
「坊主、気に入った。名を聞いてやる」
「フフっ、今から死んじゃう奴に名前教えても意味ないからヤダね」


突如、食堂の玄関が物凄い音を立て爆発した。砂煙を巻き上げ、外からは中の様子が見えない。
砂煙から人が飛び出してきた。ディアである。
男の攻撃をかわし、後ろに跳び砂煙から抜け出したのだ。

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