オリジナル
□赤と黒
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「……じゃあ、一つ願いを聞いておくれ」
「!」
「私の孫を守って貰いたいんだ……」
「孫?」
「名をクレア。赤色の頭巾を被ってる子だよ」
「ばあちゃん……」
「明日、ちょうど娘のアップルパイを持ってきてくれる約束だったから……。コイツ等に可愛い孫を食われたくはないんだよ」
「……」
「……聞き入れてくれるか?」
「……ああ。わかった」
「さぁ、出てお行き! ここでアンタを亡くすわけにはいかないからね」
ガロンはその言葉を聞くなり、その隠し通路を通って外へ出ると家のある方角が炎を見ると何かが燃えているのか火柱が上がっていた。
木々の焦げる匂いに、何故、あの時無理にでも彼女を連れていかなかったのだろうかとその場で膝を着き落胆した。
後悔の念が重くのしかかる。
終いには、匂いで気分が悪くなってしまった。
仲間に居場所を知らせるわけではなかったが、この気持ちを大声で叫んだ。
目から涙があふれる。
不意に、最後に聞いた言葉を思い出す。
『彼女の孫』を守ると言う使命。
腕で涙を拭き取る。
ガロンは仲間に見つからないよう静かにその場を離れていった。
だから、今自分はこの子を守らないと
いけない。
自分の胸ですり泣く彼女をただ抱きしめて泣きあやすしかなかった。
今の自分にはそうしてやるしかなかった。
抱きしめることで彼女の鼓動、匂いが直に来る。
より一層抱きしめる力が強くなる。
その力にクレアが気づき彼に顔を向けた。
さっきまで元気そうに笑う顔がとてつもなく悲しそうな顔をしていた。
「どうしたの……?」
「……何でもないよ」
ガロンはクレアの顔の涙の後を指で拭うと再び抱きしめる。
「ごめん。しばらく、こうさせてて……」クレアは訳が分からなかったが、そっとガロンの背に腕を回した。
"ガサッ"
「!?」
狼であるガロンは何者かの気配を感じ取った。
何者かが此方に近づいている。
その音の速さは増すばかり。
「……ガロン?」
「……誰かが此方に近づいて来てる……!!」
相手が近づくに連れガロンの耳に聞き慣れた音が入り込む。
勇ましく土を蹴り獲物を追い、荒く息をたてて走る相手。
ガロンは相手の正体が分かるなり、クレアを背負い走り出した。
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