オリジナル

□日本一エイリ太郎
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第1章  旅立ち

十七年後

青く点々と小さな雲が漂っている空の下、野原の上で少年が寝そべっていた。
「コラー!いつまで寝てんのよ!」
突如、活発な少女の声が聞こえてきた。少女は、正面のほうへ近寄ってくる。
「何だよ 紅葉」
と返事する少年。彼は、青い袴を穿き白い着物の上に飾りのついたちゃんちゃんこを着て総髪を後ろで束ねるヘアスタイルをしていた。彼の名前は、エイリ太郎。昔に、おじいさんとおばあさんに育てられた赤ん坊でした。今では、すっかり大きくなって、今ではもう十七歳。皆からは『エイリ』と呼ばれていた。
少女の方は紅葉といい、エイリの幼なじみでよくエイリと一緒に町まで言って物を売りに行っていた。
「さぁ、早く町に行かないと夜になっちゃうわ」
「お前なぁ…… そんなすぐに、夜になるわけないだろ まだ昼前だし、ここから、町まで1時間もないんだぜ」
「あら、どうかしら 私、ずっと前にあんたと町に行こうとしてあんた待ってたらいつの間にか空が、赤くなってたんですけど?」
紅葉は、少しエイリを煽る。エイリは、それに乗ったのかは否か。だが、いつものように紅葉といっしょに町に行くことにした。エイリは、なぜか紅葉に弱い。
 しばらく、二人は話をしながら歩いて行くと町が見えてきた。町に着くと紅葉達は、物々交換の店に行った。
「よーし!今度こそ買ってもらうんだから!」
彼女は、活きこんでいた。なぜなら、彼女が、売りに来たのは彼女が作った髪飾りだからである。彼女の父は、髪飾りなどを作る職人で彼女は、真似してつくりこれが売れれば、子ども扱いする父をぎゃふんと言わせてやろう考えたからである。
「なー紅葉。今日は、平気なんだろうな?」
「うるさいわね。だって、この店の主人がなかなか買ってくれないんだもん。こんなんじゃ売れないって」
「……そういえばさぁ。俺、まだ見たこと無かったんだけど。どんなの作ったんだ?」
「教えなーい」
紅葉は、ふざけて言った。
「……あっそう。ならいいですー」
エイリもまねして言った。二人は、なぜか笑った。
「それじゃあ、エイリ。私行ってくるから。……どっか行かないでよ。いい?」
いつの間にか物々交換所についていた。彼女は、そう言い店の中に入っていった。
(……どっか行くなって言っても…何時間も待たされるんだぜ毎回。…なのに着いてく俺って……)
とエイリは、考えた末。エイリは人ごみに入っていた。多分今日も遅くなると思って…
エイリが町をぶらぶら歩いていると向こうから子供の声が聞こえてきた。
「やぁーい。犬耳。何でお前が、町まで来てんだよ。森にでも行ってろ!」
「ここは、俺らの縄張りなんだぜ。お前みたいな化け物が来るところじゃねーんだよ」
「ほらほら、早く帰らないと狼母さんが怒ってくるぞ!」
「あんまり、言うこときかねーと物売りに売っちまうぞー!」
ほかにも複数の男児が一人の男児をいじめていた。エイリは、それを見てその子供達近づきました。
「おい!お前ら、何してんだ。…いじめは、よくねーなぁ」
とエイリが言うと子供達は、急いで逃げて行った。エイリは、子供達の姿が、消えたのを確認してから、いじめられた男児に近づいた。
「おい。大丈夫か?」
エイリは、その男児を見て気がついた。始めは、子供達の体で見えなく遠かったためその存在が本当なのか信じがたいものと思っていた。だが、今それは目の前にあった。それは、男児の頭に生えていた。『犬耳』である。犬耳は、男児の髪の毛と同じ色をしていた。
男児の髪は銀色でぼろぼろの服を着ていた。体には、あざや打撲の後があちらこちらにあった。男児に息はあるが何回も呼んでも反応がない。エイリは、その子をおぶり慌てて紅葉の所へ行った。


その頃、紅葉は、いつもと違って早くに店から出ていた。今回は何とか買ってもらえたらしい。そして紅葉は、いつもと違うことに気がついた。そう、エイリがいないことだ。
「あいつー!待ってろって言ったのに〜。もう!何処に居るんだか……」
と言いながら紅葉は、物々交換屋の入り口の近くにある長いす―多分売り物であろうそれに座った。
「紅葉―!」
何処かどで紅葉を呼ぶ声が聞こえた。あの声は、エイリである。エイリは、走ってきたらしく息が切れていた。もちろん背中に男児をおぶって。
「ちょっと!行くなって言ったでしょ!何であんたは!…?…どうしたのその子?」
紅葉は、エイリの背中にいる男児に気がついた。
「それが、実は!あ〜もう!話は後!!家に帰る!!話はその時!!」
「えっちょっと!!」
エイリは、急いだその後を追って紅葉も急いだ。


それから三時間過ぎた頃、外は、赤くなっていた。紅葉は、暗くなると危険だからといい家に帰った。エイリは三時間の間、男児の手や足など汚れているところを手ぬぐいで拭いてやり布団に寝かせるなどずっと男児の看病をしていた。そして、しばらくしてからだった。男児は、ゆっくりと目を開け、上半身を起こした。
「ふぁぁ……ここは、何処でござるか?」
男児は、目をかきながらあたりを見渡した。
「おっ!気がついたか。大丈夫か?」
男児は、エイリのほうを見て少しびっくりした。……びっくりしていると言うより怯えているようだった。
「ここは、俺の家おじいさんとおばさんとで三人で暮らしてんだ」
そういい、エイリは、子供に服を渡した。青い裾絞りの袴に白い着物、ついでに、ボンボンの飾りのついたちゃんちゃんこ。何処となくエイリの服に似ていた。
「お前の服かなりボロボロだったから、それやるよ。……まぁ、俺のおさがりだけどな」
子供は、警戒しながらもその服を手に取り布団から出てきて着替え始めた。
すると、エイリは、あることに気がついた。子供のお尻に尻尾が着いていた。尻尾は、耳と同様に銀色で、フサフサしていた。
(あの尻尾は、何だ?今時の子供は、あんな本物の動物にそっくりの耳と尻尾付けてんのか?それに、あのでかさ、あのフサフサ感……犬だ。絶対に犬のコスプレだ!!)

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