キリ番小説

□手を差し伸べて
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後ろから声が聞こえてきてゆっくりとそっちの方へと振り向く。
すべてを包み込むような澄んだエメラルドの瞳・・。蜂蜜色の金の髪が月明かりに照らされて銀色に見えた・・・。
「クレア・・・。どーしたんだ?まだ起きていたのか」
「夜風は体に悪いわ。早く家に入ったほうが・・」
クレアは、強くなった。体とかの問題じゃない。彼女の心が強くなったとオレは思っている。自分の体から、長い間離れていたというのに・・・自分ができることを精一杯やっていたと言うのだ、彼女は・・・。しかしオレは、その彼女の手を・・・・・・
「ヴェイグ。私ね、思ったの・・・以前に比べていろんな人とたくさん話すようになったわね」
その言葉は突然クレアの口から出た。
そのまま彼女は、話を続けた。

私・・・感謝してるのよ?今回の旅の中でいろんな地を点々として、多くの人々と会って・・・
世界中の人たちが何を思いながら生きているのか、たくさん知ることができたんだもの。
それに――――

そこでしばらく黙り、満面の笑顔を向けてこう言ってきた。
「あなたの心の中も、たくさん知ることができたんだから・・・」
一回彼女のことを傷つけたというのに、なぜ彼女はオレに何度も手を差し伸べてくれるのか?考えるたびにそう思った。それを聞くたびに、クレアはいつもこう言う。
『あなたは私の家族・・・お兄ちゃんだから』
「もう夜も遅いわ。そろそろ家に戻りましょう?」
そう言って、また彼女は手を差し伸べてくれた。
今までオレは、自分自身を隠しながら生活していた。でももう、自分自身を隠さなくてもいいのかもしれない。
オレには、帰ることのできる家があるのだから。

オレは静かに彼女の手に、自分の手を重ねた・・・
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