すれいやあず

□疑問
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「フィリアちゃん!
 ジャムを沢山作ったから、お裾分けに来たよ。」
フィリアと獣人達の店の向かいにある家の住人が、瓶を抱えてやってきた。
「まあ、ソフィーさん!
 いつもありがとうございます。」
フィリアはその人を笑顔で出迎えた。
ソフィーという名の彼女は、ぽっちゃりとしてかわいらしい、気の良いおばさん、といった風な四十歳代の女性で、フィリアたちがこの街に移り住んで来た時から、色々と世話をやいてくれていた。
特に料理が趣味で、多く作りすぎたと言っては、今日の様にフィリアのもとへお裾分けをしにくる。
「わぁ、チェリージャムですね、美味しそう!
 さっそく、お茶の時間になったらスコーンに付けて頂きますねっ。」
瓶を受け取ったフィリアは、中を見て嬉しそうに微笑んだ。
フィリアはソフィーの料理が大好きだった。
何より、この街に来たばかりで知り合いも居なかったフィリア達に、親切にしてくれたソフィーの存在はフィリアにとって心強いものだった。
「あ、でも今日はお店も暇だし……ちょっと早いけど、もうお茶の時間にしちゃおうかしらっ。
 ソフィーさんも一緒にいかがですか?」
「あら、良いのかい?
 お邪魔しちゃって。」
「勿論です!
 グラボスさん、お湯沸かして貰っていいですか?」
「おうっ!」
フィリアはご機嫌に鼻歌を歌いながら、カチャカチャと茶器の用意を始めた。
「なんだか悪いわねぇ、仕事を中断させちゃって。」
ソフィーが申し訳なさそうに声を漏らすと、フィリアはにっこり微笑んだ。
「とんでもないです。
 どうせ暇だったし。
 ソフィーさんのお料理、大好きだから嬉しいです。
 あ、そうそう、昨日の夜に焼いたスコーンが……。」
言いながらフィリアは、ぱたぱたと戸棚を開ける。
グラボスが沸かした湯をテーブルのポットへ注ぎ、茶葉を蒸らすように蓋をすると
「俺は店番をしてるんで」
と、店頭へ戻って行った。
「あら、悪いわねぇ。」
呟きながら、ソフィーは席へつく。
「気になさらないで下さい。
 グラボスさんもジラスさんも、ゆっくりお茶するより、お店で体を動かしてる方が好きみたいなんです。」
フィリアもそう言いながら、椅子に座った。
「ふうん、そうなのかい。」
フィリアがポットからティーカップへ香茶をゆっくり注ぐ。
それをソフィーは「ありがとう」と受け取った。
フィリアは自分のカップにも香茶を注ぐと、スコーンにジャムを付け、口へと運んだ。
「美味しいっ。」
思わず片手で頬を抑える。
「甘すぎず、酸っぱすぎず、丁度わたし好みの甘さです。
 おいしい〜。」
「それは良かったわ。」
ソフィーは微笑む。
「これ、お砂糖の分量とかどのくらいにして作ってるんですか?
 私、いつもジャムってうまくいかないんですよ。
 甘すぎたり、酸っぱすぎたりしちゃって……。」
「分量かぁ……。
 いつも適当だから、何とも言えないわね。」
「……やっぱり。
 お料理の上手な方って、皆そうおっしゃいますよね。
 私も、目分量でおいしく作れるようになりたいです。」
そうしょんぼり言うフィリアにソフィーは、
「あはは!経験を積み重ねることが大事なんだよ。」
と笑った。
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