すれいやあず

□とまどい
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フィリアが晩御飯の買い出しを終えて店に帰ってきた時。
フィリアの気配を感じ取ったらしい同居人の獣人二人は、青い顔をし、勢いよく飛び出してきた。
「姐さん!!!!!!」
ただならぬ様子の二人にフィリアは驚いた。
「ど、どうしたのですか!?」
二人は目を潤ませ、今にも泣きそうだ。
「お、俺、やっちまったよう……!」
「姐さん…すまねぇ……!」
「親分、悪くない!俺が、札、間違えた!」
「い、いや、俺がちゃんと確認しなかったから!」
興奮しながらもお互いを庇い合う二人の肩に、フィリアはぽんと手を置き、優しく言った。
「何があったのですか?落ち着いて、ゆっくり、教えてください。」
フィリアの言葉に二人は俯いた。
「さあ、とりあえず、中に入りましょう。ね。」



「…それは、やってしまいましたね……。」
フィリアは思わず片手で額を押さえた。
二人の話はこうだった。

この店には、ケインという名の男性客が時折訪れていた。
彼は街外れの大きな屋敷に住んでいるこの街ではそこそこ名の知れたお金持ちで、年の頃は三十代後半くらいか。
細身の体つきに短く切ったブラウンの髪、切れ長の目にスッと通った鼻筋の、なかなか端正な顔立ちをした男性だ。
青白い肌のせいか神経質そうにも見えるが、数回話したことのあるフィリアは、悪い印象は持たなかった。
何より、彼の骨董品を見る目はなかなかのものだった。
フィリアが自信を持って仕入れた品物は、大抵彼が目を付け買っていった。
それがかなり値の張る品物でも。
つまりケインはこの店にとって、「大切なお得意様」であった。
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