恭人夢
□L'inizio
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携帯の着信音で目が覚めた
懐かしい夢を見た
親を殺した後のわずかな時間
弟と二人っきりで
人生の中で一番幸せだった時
ふ、と自嘲の笑みがこぼれる
(自らその幸せを壊しておいて、今更何を…)
(考えているんだか…)
誰かが階段を昇ってくる気配がした
相手は分かっているが
いつもの癖で身構えてしまう
裏社会の住人、ましてや情報屋は常に命を狙われている
この癖がなくては生き残れなかったのだが、正直疲れる
なくてはならないスキルと、それによる疲労感の矛盾
そのやりどころが見つからず、彼にそれを教えた者を睨む
己の師を―――