恭人夢
□L'inizio
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あれはもうどれくらい前だったろうか
遠ざかってゆく日本を船室から見ながら
ただひたすらにごめん、ごめんと繰り返して泣いていた
唯一の兄弟
腹違いというだけで義理の母からいわれなき虐待を受け続けた小さな弟
義母に毒を盛られ、目も足もきかなくなってしまったあわれな弟
兄が親殺しの重罪人になってしまった不運の弟
ごめん、絶対に守るって何があってもずっと側にいるって約束したのに
ごめん、約束破っちゃった…
言い訳かもしれないけど俺が売られればお前の目と足は治るんだ
後のことは全部、任侠団体…まあ平たく言えばヤクザだけど、そこの偉い人に任せたから
…小学生でも、出来ることはたくさんあったよ
親殺しも、ヤクザに取り入ることも、他にも沢山やったよ
死ぬ気になればなんだって簡単に出来たんだ
だから、きっとお前も大丈夫だよ
愛しい、弟――