REQUIEM

□STAGE03「偽りのクラスメイト」
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 翌日、アッシュフォード学園に向かったのはルルーシュだ。
 昨日のことで疲れ果てていたのかゼロは起きる気配がなかった。
 生徒会の仕事をこなして教室へ行けば、昨日のシンジュクゲットーでの出来事がニュースで流されていた。
(おかしい……何故、あの情報を隠す)
 クロヴィスが殺されたことをブリタニア軍はすでに知っているはずだ。
 乾いた銃声音がフラッシュバックのように耳に木霊する。
「うっ……」
 悲鳴を上げることなく床に倒れこんだクロヴィス。
 床に広がる血の海。
 胃がせり上がってくる感覚にルルーシュは教室から飛び出す。
「っ……」
 胃の中のものを全て吐き出せば、少し身体が楽になる。
「……大丈夫か?」
「ゼロ……」
 漸く目を覚ましたゼロがルルーシュのことを心配して様子を見に来てくれたようだ。
 ゼロの考えは当たってしまった。
 ルルーシュはゼロと違い平和な鳥籠の中で生きてきた。
 それを作り上げたのはゼロだ。
 ルルーシュのために、自分のために、ゼロは今までもたくさんの血を流してきた。
 だからゼロは血にも死体にも慣れている。
 だがルルーシュは違う。
 それこそ、ブリタニアの日本占領の際は多くの死体を見てきたかもしれないが、目の前で義兄が死ぬところを見たのは当たり前だが初めてだろう。
「ゼロ?」
 吐くことにも体力はいる。
 ふらつく身体をゼロに預けルルーシュは鏡越しに同じ顔を見つめる。
「クロヴィスの死を隠すということは……」
「混乱を防ぐためだろうな。しかし、それをやるということは発表するときに……」
 ゼロに抱き締められたルルーシュはぎゅっと目を瞑る。
「ふふっ、我ながら細い神経だな」
「仕方がない。お前の心は綺麗過ぎる」
「ゼロ……」
 ゼロは隠しているようだが、ルルーシュは知っている。
 ゼロが自分のために余計な血を流していることを……。
 ずっと一緒にいるから分かる。
 ゼロからは時たま死臭や血の匂いがしていた。
 彼が必死に隠そうとしていたから、ルルーシュは黙っていたのだ。
「ルルーシュ。今日は部屋で休め。教室には私が行く」
 真っ青な顔をされればゼロも心配で仕方がない。
 これ以上は無理とルルーシュも分かっていたのだろう。
 ルルーシュは大人しく部屋に戻る。


   ***


 レジスタンスとして動いていたカレンを教室内で見つけたのはゼロだった。
 雰囲気が全く違うため一瞬分からなかったが、彼女があのときの少女だとゼロは確信していた。
 だから何故レジスタンスとして動いていたのかを王の力を使って聞き出した。
「えっと……私に何か……」
 目の前にいるゼロにカレンは困ったような表情をしている。
 一瞬だが記憶がないことをいぶかしんでいるようだ。
「いや、もう用はすんだ」
 首をかしげているカレンをその場に残して立ち去ろうとする。
「そうだ。念のため……」
ゼロは立ち止まり、再び王の力を発動させる。
「シンジュクのことは何も言うな」
「え? シンジュクってどういうこと? どうしてそんなことを言うの?」
 しかしカレンはゼロの命令を聞くことはない。
「教室に戻れ」
「貴方が質問に答えてくれたらね」
 何故かカレンに王の力が使えない。
(効かない……どういうことだ。これは……)
 ゼロは一歩後ろへ下がる。
 これはゼロの失態だ。
 何とかしなければいけない。
 だが当然のことで対処が出来ない。
 そんな二人の緊張感に割り込むようにシャーリーが声をかけてきた。
 そのタイミングでゼロはカレンの前から逃げ出す。
 もちろん、そのまま教室に戻ることはしない。
 ゼロはそのままルルーシュが休んでいるクラブハウスに戻って来た。
「……ゼロ?」
 廊下を走る靴音と自分の部屋のドアが開閉する音に横になっていたルルーシュが身体を起こす。
 ゼロはずるずると床に座り込む。
「ゼロ、どうしたんだ?」
「……しくじった」
 いつまでも冷たい床に座らせるわけにもいかずルルーシュはゼロをベッドに座らせる。
 ゼロがぽつりぽつりと話してくれることに考え込む。
「それは……困ったな」
 ルルーシュは王の力を使えないから、その力がどういうものか分からない。
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