REQUIEM

□STAGE07「コーネリアを撃て」
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 隣で眠っているルルーシュの呻き声でゼロは目を覚ました。
「ルルーシュ……」
 悪い夢でも見ているのか、この表情は苦しそうだ。
 何度も名前を呼び、肩を揺するが、かなり深い眠りなのだろう、目を覚ましてくれない。
 ここまでルルーシュが魘される夢は過去のことしかない。
 その頃ゼロはルルーシュと一緒にはいられなかった。
 あの辛い時期に側にいることが出来なかったことが今でも悔しい。
「ルルーシュ」
 少しでも穏やかに眠れるようにとゼロは力強く抱き締める。
「ん……」
 ゼロの体温でほんの僅かだがルルーシュの身体が温まる。
 それによって、苦しそうな表情が穏やかになっていく。
(ルルーシュを苦しめる者は誰であろうと許さない)
「ん?」
 枕元に置いていた携帯がメールの着信を伝える。
 ルルーシュの身体を抱き締めたまま携帯を確認する。
「コーネリアが動くか……」
 中立の立場を取らなければいけないというのに、あの男はこうして情報をリークしてくる。
 その情報は数時間後には別のところからも得ることが出来るようなものだが、それでも先に得ることが出来るのは、計画する時間がそれだけ多くなる。
 携帯を放り投げるとルルーシュを抱き込むように目を閉じる。
 コーネリアがどう動くか分からないため、今すぐに動くことは出来ない。

   ***

 数時間後、コーネリアはゼロを挑発するような行動に出た。
(……ゼロを挑発している)
 コーネリアはゼロの性格をよく理解しているようだ。
 ルルーシュはニュースを見ながら爪を咬む。
 ルルーシュにはゼロが次に起こす行動が分かる。
 だが相手がコーネリアだと、ギアスの力だけでは勝てるわけはない。
「乗るつもりなのか? コーネリアの挑発に……」
 ゼロが部屋に戻って来たとき、その表情を見ただけで分かってしまう。
 伊達に双子ではない。
 双子でなくてもゼロのことなら分かるつもりだし、分かりたいと思っている。
「わざわざ正体してくれたんだ。それにコーネリアには聞かなければいけないこともあるだろ?」
 ゼロにとってはどうでもいいことだが、ルルーシュとナナリーには重要なことだ。
「ブリタニアの破壊と母殺しの犯人を見つけること……お前はどっちが大事なんだ」
 ベッドで横たわっていたC.C.がむくりと起き上がる。
 母親のことは言っていないはずなのに、何故C.C.はそのことを知っているのだろうか。
 母親のことを言われてルルーシュは辛そうにぎゅっと自分の身体を抱き締める。
「同じだよ、その二つは。ブリタニアの皇族は次の皇帝の座を巡って、常に争っている。……いや、争わされているんだ。あの男に!」
 そっとルルーシュを抱き締めたゼロは、C.C.を睨み付ける。
 ルルーシュの傷を抉る者は共犯者であっても許さない。
 それを見たC.C.は過保護すぎではないかと肩をすくめる。
「しかし、それがブリタニアの強さでもある。そうして勝ち残った、最も優秀な人間が次の皇帝になるのだから……」
「そうだ! 弱者は全てを失い這い付くばる。ブリタニアってのは、そういう国だ。そういう世界だ」
 だからこそ、弱者であったルルーシュは心に大きな傷を負った。
 ナナリーは心と身体に傷を負った。
「弱肉強食は原種のルールだ」
 もちろんゼロだって分かっている。
 だがブリタニアはそのルールが厳しすぎる。
 きつ過ぎる。
 なぜルルーシュたちがこんな目に会わなければいけないのか分からない。
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