短編(一期ネタ)

□ティータイム
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 軍の仕事も休みの穏やかな午後。
 テラスで読書を楽しんでいたルルーシュ・ランペルージは目の前にいる茶色のふわふわの犬に微笑む。
「ルルーシュ?」
「紅茶が飲みたいな」
「イエス、ユアハイネス」
 今のスザクには断ることは出来ない。
 実はルルーシュが大事にしていたデータを消してしまい一日奴隷……もとい一日執事を仰せつかったのだ。
 しかしスザクは紅茶など淹れたことがない。
 キッチンへ行ったはいいが何をすればいいか分からずに途方に暮れる。
「えっと……」
 とりあえず必要そうな材料を取り出す。
 カフェオレを入れるカフェオレボールに戸棚から取り出した紅茶の葉っぱ。
「これでいいのかな?」
 カップにザラザラと紅茶の茶葉を直接入れる。
 そしてポットのお湯をそのまま注ぎいれる。
「何か違う?」
 いつもルルーシュが淹れてくれている紅茶とは全く違う。
 スザクは首を傾げる。
「おい、スザク。まだか?」
 いつまで経っても紅茶を持ってこないスザクに痺れを切らしてルルーシュがキッチンへやって来る。
 そしてスザクの手の中にあるものを見て眉間に皺を寄せる。
「お前は俺にそれを飲ませるつもりなのか?」
「……だって紅茶なんか淹れたことないんだもん」
「……頼んだ俺が馬鹿だったな」
 上司に味覚音痴のセシルがいたことをすっかり忘れていた。
 ルルーシュは深い溜め息を吐く。
「ルルーシュ?」
「俺が指示するからその通り作れ」
 どう考えてもルルーシュが淹れたほうが楽だが、今日は全てをスザクにやらせるつもりらしい。
「まずは今から言う道具を全て用意しろ」
「イエス、ユアハイネス」
 湯を沸かすための薬缶、ティーカップ、ティーポット、茶匙、軽量カップ、ストレーナー、ティーコジーなどルルーシュの口からはスザクの知らない単語が次々と出てくる。
「ちょ、ちょっと待って」
「なんだ?」
「ストレーナーとてぃーコジーって何?」
 他の道具は何となく分かったが、最後の二つはスザクにはさっぱり分からない。
「ストレーナーは茶こしで、ティーコジーは茶帽子だろ。なんだ、そんなことも知らないのか?」
 別に知らなくても生きていけるとは言えない。
 そんなことを言えば何が飛んでくるか分からない。
 紅茶に関してはルルーシュは恐らく世界で一番煩いだろう。
 スザクは反抗することなく言われた材料を用意する。
「用意出来たよ」
「なら湯を沸かせ。水は水道水でいいぞ。エリア11の水質は軟水だから紅茶には適しているんだ。沸かす量はポットとカップを暖める量を含めて600から700ccが適量だ。軽量カップで測れよ。あとは空気を含むように勢い欲薬缶に入れて沸かせ」
 滑るようにルルーシュの口から出る言葉にスザクは真っ白になる。
「ちょっと待ってよ! そんなに一度に言われても覚えられないよ」
「お前の頭はトリか」
「トリ?」
(何故そこで首を傾げる)
 天然だとは分かっていたが、ここまでくると呆れを通り越して溜め息しか出ない。
 それでもスザクが分かるように説明を繰り返す。
 というかスザクの動きに合わせてルルーシュが次の指示を出していく。
(確かにこれなら自分で用意したほうが楽だったな)
 そうは思うが、一生懸命やっているスザクを見ると今更仕事を横取りすることも出来ない。
「ルルーシュ、お湯が沸いたよ」
「湯が沸いたら火を止めてポットに適量を入れてポットを温めるんだ。間違っても全部入れるなよ」
 一から十まで言わなければスザクは勝手な判断で進めてしまう。
 今回もルルーシュが言わなければ沸かした湯を全て入れていただろう。
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