REQUIEM

□STAGE04「その名はゼロ」
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 そのニュースを見て冷静でいられるわけがなかった。
 それでも真実を知らない生徒会のメンバーの前では仮面を被り続けるしかない。
 だが、妹は、ナナリーはそうもいかない。
 クロヴィスという義兄が死んだことも、その犯人としてスザクが捕まったこともかなりショックだなのだろう。
 泣き疲れてしまったナナリーを宥めて休ませると部屋に戻る。
「ルルーシュ、大丈夫か」
「ゼロ……」
 憔悴しきった弟の頬をそっと撫でる。
「ゼロ……スザクが……ッ」
 死んだと思っていたスザクが生きていた。
 それは喜ぶべきことだ。
 しかし自分たちが仕出かしたことでスザクが危険な目に合っている。
 しかしルルーシュにはどうすることも出来ない。
 そしてゼロに頼むのもお門違いだと分かっている。
 それでも……。
「ゼロ……」
 しかし言葉にすることは出来ない。
 その代わりにゼロに抱きつく。
 ルルーシュには縋り付くことしか出来ない。
「俺にも力があれば……」
「お前には必要ない力だ」
 王の力は孤独にする。
 あの女の言葉だ。
 それが現実になるかは、そのときにならなければ分からない。
 しかしそんな目にルルーシュを合わせるつもりはない。
(さすがに、諦めろとは言えないか……)
 ゼロからしてみれば自分の代わりに捕まってくれるのだ。
 それによってこちらに危険が及ぶことはない。
 だが、ルルーシュとナナリーが悲しむ。
 それはゼロの願いではない。
「安心しろ」
 心が憔悴していたルルーシュはそのまま眠ってしまった。
 そっと身体をベッドに横たわらせる。
(最近笑顔を見ていないな)
 笑顔を失わせたのはゼロ。
 それを望んだのはルルーシュ。
 自分たちが選び進んだ道に後悔はない。
 だが……。
「様子くらいは聞けるか……」
 ルルーシュの寝顔を飽きることなく見つめながらゼロはどこかへ電話をかける。
 昨日の今日だ。
 あまり連絡は取りたくない相手だが、軍の内情に関してゼロは殆ど情報を持っていない。
『もしも〜し』
「……その話し方を止めろ」
『ご無事だったようですね』
 電話相手は特派のロイドだ。
 中立の立場である彼にだけはこうして連絡を取ることが出来る。
「調べて欲しいことがある」
『僕で分かることなら、何なりと……』
「クロヴィス殺害容疑で捕まった枢木スザクのことだ」
『……殿下』
「私はそう呼ばれる存在ではない」
 皇族の血が流れていても認められなかった。
 生まれすら否定された存在だ。
 そのゼロをロイドは「殿下」と呼ぶ。
『……真犯人が見つかるまで彼が釈放されることはないですね』
「どうにかならないか?」
『僕もどうにかしたいんですが、あの人がサミットで連絡が取れなくてね』
 ロイドの口から出てきた「あの人」にゼロの眉間に皺が寄る。
 出来るなら彼の力は借りたくない。
 借りてしまえば、後で何を言われるか分かったものじゃない。
 しかし、あの人の力を使わなければ釈放が叶わないというのなら、今の状態で釈放させるのは不可能だろう。
『殿下……深入りしないで下さいよ』
 心配げな声のロイドを無視して電話を切る。
 長く電話をしてこの場所を調べられても困る。
(ロイドは使えない。となると……)
 そっと後ろを振り返れば深い眠りについているルルーシュの寝顔がある。
「そうだ。引き返すべき道は……いらない」
 全てはルルーシュが幸せに生きることが出来る世界を作るためだ。
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