Kiss.xxx
□君と。
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「喉乾いたー、祐(たすく)、いつもの買ってきて」
「はいはい。カフェオレな」
体育の授業が終わり、教室に戻る途中にすれ違った祐にそう言ったら、頭をポン、と叩いて友達とホールの方に行ってしまった。
「相変わらず杏(あん)には従順だねぇ」
「でしょ!」
友達の美波(みなみ)にそう返して教室に入る。
私の名前は奥田杏。
中学二年の14歳だ。
「でもさ、聞いた?この前、斎藤告白されたらしいよ」
美波の言葉に、机に俯せになったばかりの私はまた顔を上げる。
斎藤とは、祐の姓である。
「うそっ!聞いてない!」
「当たり前でしょ〜、別に付き合ってる訳じゃ無いんだから」
グサッとその言葉が刺さり、また机に俯せになる。
そうでした。
どうせ、付き合ってる訳じゃありませんよ。
私の片思いですよ。
それを美波も知っていてこう言ってくる訳だ。
日常茶飯事なので、そこまで気にしてはないんだけど。
「そうですね…美波、相変わらず厳しいね」
「言えばいいのに」
「何を?」
「だから、斎藤に好きだって」