物憂げに伏せられていた瞼が開かれて、露になった赤と青の瞳が私を捉える。
ああこの人は何と美しいのだろうと、何度思ったか知れないことを痛いほどに感じて指先が微かに震えた。
それを見とめた目の前の人は、膝の上で祈るように組まれた指をするりと解いて私の手を優しく握る。
口元に湛えられた微笑は息を呑むくらいに綺麗で、けれどだからこの人はおそろしい。
「クローム、お前は一体どうして震えているのです」
その答えを、この人は知っているはずだった。知らないわけがなかった。
けれど答えることを望んでいるのなら私は答えなければならない。
だというのに懸命に開こうとする口からは声はおろか音すら出ない。
少なくとも今は私だけを映している赤と青を、私の手を握るその指の優美さを、顔の造りの端正さを、言葉の一つ一つに込められた優しい毒を、
今さら思い知った私はただ囚われるしかなくて、目の前の美しい人はそれを望んでいるのだ。
この人が本当はちっとも優しくなんかないことくらい、とうの昔に気がついてしまったというのに私は、それでも盲目でありたいと、
2009-12-08
骸とクロームの主従関係の不条理さが好き