仕方のないことだったんです。彼の薄い唇からそう告げられると、なるほどそうかと妙に納得してしまって、続ける言葉をうしなった僕は開きかけ
た口を閉じた。
そう、それでいいのですよ。色違いの両眼を細めて彼は満足気な微笑を浮かべる。
彼がそう言うのならきっと、それが正しいのだろうと思った。
「かわいそうだと思いすぎると、却って恨まれると言うでしょう」
言いながら彼は路傍に横たわる猫の屍に一瞥を投げる。
ありふれた景色を映すようにそれを見つめる瞳には、同情も憐憫も見当たらない。
もっとも僕だって本当は、かわいそうだなんて言っておきながら、そんなことちっとも思っていやしなかったのだけれど。
「仕方のないことが、どうしようもないことがこの世界には無数にあるんです。
これは・・・この猫は、それの一つに過ぎません」
「―君のこともそうだって言うの」
「ええ」
何かを悼むように彼の長い睫がそっと伏せられる。
けれどそれが自らに対するものなのか猫に対するものなのか、僕には計れない。
2009-11-21
口では仕方がないとか言いながら祈ってる気がします骸は
祈ってるというか救われたがってるというか