小説

□Comeon.CheerUP
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冷たい空気に線香の香りが漂う。


とてつもなく小さな火は
落ちてくる雪に消されてしまいそう。


僕の口からは白い息。


昔から変わらない、


僕と家族が住んでた場所。


少しだけ家が増えた気がする。


最近は帰ってないから気がつかなかった。


雷門中のサッカー部に入ってから


全然歩いてない


今も皆と共に此所に来た。


僕の我が儘を聞いてくれて。


だけど僕は此所に一人で来たかった。


皆はもうちょっと先で車を停めて待っててくれる。


だって


「久し振り、お母さん、お父さん
















アツヤ…」


僕の大切な人たちが眠る場所。


僕は貴方たちの前にしゃがみ込む。


本当なら、僕の帰る家には
毎日貴方たちが笑って出迎えて
くれたのかもしれない


でもそうするとアツヤもサッカー部だよね、


それで一緒に帰って来て、


一緒にご飯食べて、


一緒に遊んで、


一緒に勉強して、


一緒に成長していく


そんな未来を歩みたかった。


「聞いて、皆。僕やっと分ったんだ」


お父さんが言ってた


((完璧))の意味。


そうだよ、


アツヤとサッカーしてた時は


楽しくて、楽しくて


だけど、アツヤがいなくなってから


僕は焦ってたんだ…


だから完璧になろうと必死で…


「僕はもう弱虫じゃないよ」


アツヤ、僕は変わっていく。


いつも一緒だった僕たち


でももう一緒にはいられないから


ちゃんと僕を見ていて。


「これからもずっと大好きだからね」


線香の火は案の定、
雪で消されていて


僕は最後に貴方たちにほほ笑むと


ゆっくりと立ち上がった。


「じゃあ僕行くね、」


待ってくれている人たちがいるから。


一度だけ振り返ったが


何も景色は変わらない。


僕は安心して


来た道を歩き始めた。





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