別れ道

□reila
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 いつもは広い風呂場が、狭いくらいに感じた。

 二人いても、狭いわけじゃない………清明、が///


「せ、清明///」

「ん?」


 近い、近すぎる!

 向かい合って、膝が擦れるくらいに近くにいる。


「………っ」

「なに?」

「なんでも、ない、デス」


 さもそれが当然のように、本当に不思議そうに聞かれたら、何も言えなくなってしまった。

 恥ずかしい……清明の、たくましく雄々しい身体と、自分の、貧相で……

……………傷だらけの、『いらない子供』の烙印を押された身体が、恥ずかしい。

 恥ずかしくて、1番酷い、噛み付かれてえぐれた鎖骨の傷を、掌で隠した。


「なんで隠してるの?」

「………だって、」


 清明は、なんでも俺のことを見抜いてしまう。

 なんでも、分かってくれる。


「恥ずかしくないよ……立夏はいらない子なんかじゃないよ」

「でも、母さんは、」

「立夏は俺の言うこと、信じられない?」


 ふるふると首を横に振ると、清明は優しく、殊更、優しく、微笑んでくれて。

 傷を隠す右腕の手首を掴んで、障害のなくなった傷痕をまじまじと見た。

 捕まった、右腕も。左の臑も、横腹も、背中も。

 なんて、汚いんだろう。恥ずかしい。


「立夏は綺麗だよ」

「ぁッ………」


 言って、清明は、鎖骨の傷口に唇付けた。

 そして、ざらりとした舌先が、傷口をなぞり、血の味を確かめていた。

 じんわりと、傷口が広がる痛みで熱くなる。

 きゅっと目を閉じて、そこ行為に堪える。これはきっと浄化作用を齎してくれると思ったから。

 痛みを痛みで塗り潰せば、罪も償えるのかと。


「ぁ! や、ッぁ………せ、め……なにする……」


 清明の舌先が、標的を変えていた。

 傷口から、二つの、桜色の、突起に……唇を、寄せて。


「立夏を綺麗にしてあげるよ」


 あぁ、清明は。

 俺のこと、全部、分かってくれてるんだね………欲しい言葉を、全部くれる。

 清明になら、何されたってかまわない。





 殺されたって、いい。
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