別れ道
□reila
2ページ/6ページ
いつもは広い風呂場が、狭いくらいに感じた。
二人いても、狭いわけじゃない………清明、が///
「せ、清明///」
「ん?」
近い、近すぎる!
向かい合って、膝が擦れるくらいに近くにいる。
「………っ」
「なに?」
「なんでも、ない、デス」
さもそれが当然のように、本当に不思議そうに聞かれたら、何も言えなくなってしまった。
恥ずかしい……清明の、たくましく雄々しい身体と、自分の、貧相で……
……………傷だらけの、『いらない子供』の烙印を押された身体が、恥ずかしい。
恥ずかしくて、1番酷い、噛み付かれてえぐれた鎖骨の傷を、掌で隠した。
「なんで隠してるの?」
「………だって、」
清明は、なんでも俺のことを見抜いてしまう。
なんでも、分かってくれる。
「恥ずかしくないよ……立夏はいらない子なんかじゃないよ」
「でも、母さんは、」
「立夏は俺の言うこと、信じられない?」
ふるふると首を横に振ると、清明は優しく、殊更、優しく、微笑んでくれて。
傷を隠す右腕の手首を掴んで、障害のなくなった傷痕をまじまじと見た。
捕まった、右腕も。左の臑も、横腹も、背中も。
なんて、汚いんだろう。恥ずかしい。
「立夏は綺麗だよ」
「ぁッ………」
言って、清明は、鎖骨の傷口に唇付けた。
そして、ざらりとした舌先が、傷口をなぞり、血の味を確かめていた。
じんわりと、傷口が広がる痛みで熱くなる。
きゅっと目を閉じて、そこ行為に堪える。これはきっと浄化作用を齎してくれると思ったから。
痛みを痛みで塗り潰せば、罪も償えるのかと。
「ぁ! や、ッぁ………せ、め……なにする……」
清明の舌先が、標的を変えていた。
傷口から、二つの、桜色の、突起に……唇を、寄せて。
「立夏を綺麗にしてあげるよ」
あぁ、清明は。
俺のこと、全部、分かってくれてるんだね………欲しい言葉を、全部くれる。
清明になら、何されたってかまわない。
殺されたって、いい。