別れ道

□つめこみ
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「ね……清明、一緒に寝てもぃ……?」


 ダボダボなパジャマ姿の立夏が、ドアから半分躰を見せていた。不安気に垂れた猫耳が、ぴくぴくッと、部屋主の機嫌を気にしている。
 椅子に座り、読書をしていた清明は、そんな立夏の姿に、クスリと笑みをこぼさずにはいられなかった。理想通りに育った、可愛い弟。刷り込まれた愛情に、みじんも疑いの念を覚えたりしない。
 フッ、と、優しすぎる甘い笑みを、ドアから顔を覗かせる幼児に向けると、立夏はパァッと目を輝かせて、清明の方へ走った。

「やたっ、清明のベッドで寝れるッ♪」

「ねぇ立夏……ギブアンドテイクって知ってる?」

「……知ってる、ケド..」
「そ? いい仔だね」

 ベッドに座った立夏に、わしゃわしゃっと頭を撫でてやると、嬉しそうに笑みを溢した。
 しかしそれは瞬時にして消え、清明の言った、ギブアンドテイクの意味を知っているからこそ、立夏は、不安そうに清明を見上げた。

「ぁの………オレは、何をすればぃぃの?」

 少し前から、両親のいない日に、恥ずかしい、少し性的なコトを要求するようになった清明に、立夏はドキドキせずにはいられなかった。
 清明に触れられるコトはイヤではなかった。けれども、やはり、小学生の立夏には、それはいささか早すぎるようだった。
 恐怖と期待のいりまじる感情は、自分自身でも、説明のつかない気持ちだった。
 清明はニコリと笑う。ビクッと脅えた立夏は、尾を震わせ、耳を微動させる。

「俺の部屋で寝るんだったら、俺の服しか着てこないで」
「ぇ?」
「着古したワイシャツだったら、パジャマみたいに使えるから。ね?」
「でも、どうして?」
「だって……立夏が、俺の服を着てたら、すごく、可愛いと思うんだ」

 清明は、言って、立夏の頬をペロリと舐める。ビクビクッと反応した肩が、一気に紅潮する頬が。その全てが清明を満足させた。
 立夏は恥ずかしそうにうつ向いたまま、清明のシャツを握った。
 そう。立夏は、決して清明に逆らわない。

「分かった………言う通りにする...///」
「うん……いい仔だね、立夏。大好きだよ」

 内緒話をするように、立夏の耳元で囁くと、ちゅっ、と、唇に口づけた。極上の笑みを浮かべると、立夏は、ほわっ、と、意識を飛ばし、清明の腰に両手を回した。
 ぐりぐりとその顔を清明の胸にうずめ、尻尾をパタパタと嬉しそうに振り、耳をピクンと踊らせた。
 嬉しそうな立夏に、清明はにっこりと笑みを溢した。
 たまらなく愛おしい存在。理想通りに育てあげた弟を、もう手放す気など、毛頭なかった。更に自分色に染めてゆく。

「立夏、キスしよっか」
「んっ……シテ///」

 見上げて、しゃがみこんだ清明の首に両手を回し、立夏はキスをねだる。
 コレは、清明が、教えたことだった。

「クス。えっちな仔だね、立夏は」
「ちがぅっ...これは、清明が」
「俺は、えっちな仔が好きだな」
「……ホント?」
「うん」
「清明オレは!? オレのコトはすき???」

 クスリと笑い、清明は必死な立夏の問いに、ワザと答えない。
 不安に、立夏は目に涙を浮かべた。

「清、明ぃ....答えてよ」

 泣いた顔に、清明は楽しそうに笑い、キスをする。深く、唇を割り、舌をいれて。

「ど? これじゃ、答えにならない?」
「うんん、もっとシて!」


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