長編小説
□episode.2 glitter
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夢を見た。
優しい手が俺を撫で、強い力で抱き締めて、耳元で甘く愛を囁いてくれる、そんな夢だった。
清明だと思った。
だって、抱かれるのがとても嬉しかった。ぎゅっとされたら、たまらなく切なくて、愛おしい、そんな気持ちが胸いっぱいに広がった。
気がついたら、泣いてた。それくらい、嬉しかった。
でも、
最後にキスをくれたその人は。
草灯だった。
このままでは、清明を忘れてしまう気がした。
「僕は立夏を、海が見える町に連れて行くよ」
「そこに家を立てて、二人で暮らそう」
「好きだよ立夏」
「俺も、清明のこと、好きだよ」
「その言葉、忘れちゃだめだよ?」
「立夏……僕の本当の名前を教えるよ」
目を閉じれば今でも鮮明に、清明の笑顔を、声を、指先を思い出せるというのに。
清明を好きだと言うことを、忘れないでと、そう、言われたのに。疑うこともなく頷いて、約束したのに。
俺は、最近草灯のことばかりを考えてる。
草灯の言葉ひとつひとつがどうしようもないくらい痛くて、気になって、仕方ない。
そして草灯は俺のことを好きだという。
……俺は、清明のことが好きなのに、草灯の言葉が胸に響く。
頭に残る。触れた唇が、電撃を持ったかのようにしびれて痛む。
俺には......清明だけのに。
だめだよ、草灯は清明のモノで、俺のモノじゃない。
清明が命令すれば、きっと俺のことを殺してしまうんだから。本気じゃないんだから。
考えたくないのに。草灯、草灯、草灯...
「立夏、好きだよ」
「言うな! そんなのもう聞きたくない!!! 俺、俺は清明が...!!!」
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