長編小説
□episode.2 glitter
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「立夏……好きだよ」
そう言って、本心でもないことを草灯は言う。
耳元で、清明がするように、耳を舐めて、草灯は俺に好きだと言う。
キスをする。清明じゃないのに、清明と同じように、優しく。
清明じゃないのに。
変だ、俺………耳を舐められると、ゾクゾクってする。
清明じゃないのに、嫌なハズなのに抵抗もできずに、背中がゾクゾクってするのを感じてる。
嘘なのに! 草灯の言ってることは、『清明に頼まれた』だけの、ただの嘘なのに!!!
どうしてドキドキしたりする?
なんでこんなに痛いの?
優しいのに、意地悪な男。
分かりにくい難しい言葉でいつも俺を誤魔化して。
清明とは月とスッポンくらい差があるのに、俺、おかしいんだ......最近、草灯がいないと、淋しい、なんて。
「なんでもあげるよ。俺の心も体も魂も」
「いらないよッ俺は草灯なんかいらない! 清明が欲しい、俺は清明が好きなんだよ.....」
まるで自分に言い聞かせるみたいに。
俺が好きなのは清明だけで、俺は清明だけ欲しい。俺には清明だけいればいい。
草灯なんていらない。
草灯なんていなくても淋しくない、と。言い聞かせるみたいに。
next.