長編小説
□episode.1 dream
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俺の部屋につくと、清明は俺をベットに座らせ、自分はいつものように、救急箱を開けていた。
いつものこと。毎日、傷ができる。
だから、救急箱は一年前からずっと俺の部屋に置きっぱなし。
清明は救急箱を開けて、消毒とガーゼを取り出し、傷口にそれをつける。
「ん……っ!」
染みて、ちょっと痛くて、目をぎゅっと瞑ると、清明が俺の顔を覗きこんだ。
あ、しまった……と思ったときにはもう遅くて。
清明がちょっと哀しそうな顔をした。
こんな顔が見たくなくて、俺、傷隠したり、痛くないフリをしてるのに。
「痛かった? ごめんね」
「痛くないっ!」
「だめだよ立夏……だめだよ。そんなのバレバレだよ」
「ぁっ……」
――――――― 清明じゃない。
全身から、青く、冷たく、怖いオーラを剥き出しにして。
いつもの清明と違う。見た目は何も変わりないのに、中身だけが違う。
そんなことないのに。そんなことあるはずないのに。
「隠し通せない嘘なんて、ついちゃだめだよ」
優しい瞳が灰色に染まる。
怖くて、頬を触る清明の指に、ビクンと震えて、目を反らせた。
清明が好きなのに、清明のこと、本当に好きなのに。
たまに、すごく、コワイ。
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