長編小説
□episode.1 dream
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清明は傷口にもキスをした。
チクンとした痛みが少し気になったけど、別に平気だった。
少しだけど、痛いのは、最近、慣れた気がする。
気持ちいい。清明のキスはすごく優しくて、ふわふわするみたいに、気持ちいい。
「さ、消毒しに行こ」
「あ……うん」
もう終わり?
ちょっと残念で、シュン、と、耳を無意識に垂れさげてしまった。
俺、あんまり素直じゃないから、よく、耳に感情が現れるんだって、清明が言ってたっけ。
だから、やっぱりバレた。
クスクスっと清明は楽しそうに笑うと、俺の手を握った。
「上でまた、キスしてあげるよ」
「………ぅん////」
恥ずかしくて、握られた手を、ぎゅっと、いつもより強く握り返した。
そして、俺の部屋に、手を引いて連れて行ってくれる。
俺は、もう、小学六年生だから、お兄ちゃんである清明と手を繋ぐのはちょっと変な気もしたけど、家にいるから気にならなかった。
キスをするのは普通なんだって、清明が言ってた。
外国では「アイサツ」で、毎日、兄弟でもキスしたりするんだって。
だから、家でキスするのは好きだった。清明を独り占めできるのも嬉しかったし、なんだか愛されてるって、感じがするし。
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