小説
□恋愛シーン(濃厚)テスト2
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今日は映画を見た。アヤネといっしょに。
面白いも何もない。
なんせ初デートである。どんな話だったか、時間はどれくらいか、いや本当に映画を見たのかすら疑わしい。
とにかくお互い、トナリに意識がいきっぱなしで、映画も何もない。
「緊張」なんてものではない、いま呼吸ができているのが不思議なくらいだ。
そんなわけで疲れきった二人は、いま公園のベンチで喉を潤しているところだ。
「ふぃ〜」
炭酸飲料がよくしみる。体には悪いが、心には良い。
お隣さんがジュース片手に口を開く。
「ね……ねえヒロト! 」
「ん?」
「楽しかったね! 今日の映画」
「そ……そうだね」
まったく覚えてないけどね。
「あの、あれ、あそこ……あ、あのシーンが特に! 」
「だ……だよなやっぱ〜」
どのシーンだろう。
と思ったら、同じことがアヤネの顔にも書いてあった。
「あの、えー……あー」
何やら必死で考えている。なんだ、アヤネも俺と同じじゃないか。
「……ぷっ」
「ちょっ、ヒロト何で笑うの」
「アヤネの顔、おもしろい」
「えー! ひどいあんまりだ」
「あはははは、はははは」
なんだか少し気楽になってしまった。二人とも映画館で、映画を見てなかったらしい。
なんてくだらない。
「あっはっははは」
「もー。ふふ」
「ははは、あーあ」