兄×弟+α

□ヒートルーム
1ページ/2ページ


「熱い……」

――今日はやけに太陽の日差しが強い日だった。

宿の一室でストラタ育ちとは言え流石の熱さにヒューバートも根を上げてしまうほどに。

ちらりとヒューバートは着心地が悪い軍服を見た後、周囲を見渡して誰もいない事を確認する。

仲間達は買い出しやらクエストに行っている為、この部屋にはヒューバート以外誰もいない。
 



「……今のうちに着替えましょうかね」

軍人として常に軍服を纏う事に誇りを持っていたし心掛けていたヒューバートだったが、
流石にこの異常な暑さにそんな悠長な事を言っている余裕なんて無かった。

どうせ今日はこの宿から出る事は無いのだしねこにんが仕立ててくれた服でも着ようかな、とヒューバートはバッグから現代風若者の服を取り出した後、軍服を脱ぎだす。

「この軍服、カッコいいんですけど通気性悪いんですよね……。暑くてかないません」


ぶつくさと文句を言いながらも、上半身までの軍服を脱いだ―――その刹那。


「ただいま、ヒューバート!見てくれよこのホルダー、報酬で貰ったんだ。
カッコいいだ……ってあれ?」

「な……!」


バァンッと扉が開いたと同時にヒューバートの視界に入ってきたのは、笑顔で新品のホルダーを見せてきた兄の姿。


まさかの事態にヒューバートが頭も身体も石化したかのように硬直するのを感じた。


「すまない、着替え中だったのか。ああ、俺に構わず着替えていいぞ?」

どうやらヒューバートが遠慮していると思ったらしい、何時もの爽やか笑顔を浮かべながらアスベルがそう促すと、ハッと漸く我に返ったヒューバートは自身の顔がかああと紅潮していくのを感じた。

実の兄とは言え、男同士だとは言え、上半身だとは言え―――現在思春期まっしぐら、
多感なお年頃のヒューバートにとって上半身裸を見られるのはふしだらに感じて……恥ずかしかった。



「どうした?着替えないのか?」

「あ、あの……すみませんが、部屋から出て行って貰えませんか?その……着替えにくいので」


「何で?別にいいだろ、兄弟なんだし」

よくないから言ってるんだろ、このKY!!

――と怒鳴りたくなるのを我慢して、ヒューバートは上半身を現代風若者の上着で隠して何とか兄に出て行って貰うように頭を巡らせている……と。


「うひゃ!?」

わしっと横から脇腹を掴まれ、ヒューバートは変な悲鳴を上げてぼとりと上半身を隠していた上着を落とした。

――勿論掴んできた犯人は言うまでもなくアスベルである。

「んー、お前細いなぁ。下手したら女の子より細いんじゃないか?ちゃんと食べてる?」

「や……はなっ……ンンッ」

アスベルとしては、兄として心配してでの行為だったのだが、脇腹が性感帯のヒューバートにとっては何度もそこを触られるのは拷問に近い。

「しかも肌白いし……へぇ、肌白いから乳首もピンクなんだな、お前。ますます女の子みたいだ」

「ひっ!さ、触らないで!」

「何で?恥ずかしがるなよ、兄弟なんだ「リヴ・グラヴィディ!!」うおっ!?」

「バカ!兄さんの変態!!大っ嫌い!!」

兄弟とは言え最早これはセクハラの領域だ。
怒りと恥ずかしさで色々と限界だったヒューバートは兄に術と彼にしては稚拙な罵声を放って、ダッシュでベッドへと潜りこんだ。

兄弟のよしみでこの位で済ませてやったのだから、兄には感謝して貰いたいものだとヒューバートは思う。

もしこれが兄以外の誰かだったら、容赦なく派手に踊らせている所だ。



「そ、そんなに怒るなよって……ていうか俺、何かお前に怒られるような事した?」

「っ知りませんよ!自分で考えろ!!」

ああ、もう。最悪だ。
暑いのに、結局着替えれなかったし、包まった布団は熱いし、不恰好なままだし。

全部全部アスベルの所為だ。


「ほら、今日の夕飯、オムライスにするようにシェリアに頼んでやるから拗ねてないで出て来いよー?」

「拗ねてません!!わ!?」

「悪かったって……。だから、ほら出て来い」

ぎゅうっと布団越しに抱き締めてきた兄にヒューバートは口を閉ざす。

昔から兄には勝てないし、兄の言う事は絶対だと言うのは幼い頃から叩き込まれている。


「っ……」

けれど、彼の言う事を大人しく聞くのはヒューバートだって癪だった。

だって、悪いのはアスベルの筈で。自分は被害者なのに。

「ヒューバート、」

咎めるように自分の名前を呼ぶアスベルに、悪いのは向こうの筈なのにこちらが悪いような錯覚がしてきたヒューバートはぎゅっと歯を食いしばって、そして……。







「――で?兄弟仲良しなのは見ていて微笑ましいけれど……」

それから、1時間後。買い出しを終えて戻って来たリチャードとマリクがベッドに視線を向けた。

そこには―――未だにベッドで押し問答を続けていたらしい兄弟の姿。



「君たち、熱くないのかい?」


「「あついです……」」



布団を抱き締めているアスベルもその熱さに限界を迎えているし、布団に包まっている上に抱き締められているヒューバートは尚更で。



ぐったりとした声でリチャードに返答した兄弟に、リチャードとマリクは顔を見合わせて呆れたように溜息を吐いた。



End?


山止さんへ!を込めて。

※お持ち帰りは山止さんのみ可です。


By.津田けい
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ