ごちゃまぜ

□ホーム、スィートホーム
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ここは名無し探偵事務所。名無しはシャーロック・ホームズのような探偵に憧れて事務所を設立したのだが、くる依頼といえばいなくなったペットの捜索や良くて浮気調査、ゴミ屋敷の掃除まで頼まれたこともあった。まず依頼もそのものが少なく儲けもほとんど出ない。今日も依頼はない。客も来ない。閑古鳥が鳴いている。もう事務所畳もうかなあ、なんて考えていた時、訪問者を告げるベルの音が鳴った。名無しは顔を輝かせて事務所の扉を開ける。

「いらっしゃいま、せ……」

最初、扉の外には誰もいないと思った。しかしよく見てみれば、名無しの目線の遥か下に男の子の姿が見えた。片側だけの仮面を被った風変わりな少年だった。名無しは苦笑いをしてため息を吐き、

「ぼく、どうしたの?ペットがいなくなっちゃった?」

と前屈みになって尋ねた。

「いいや。君にはもっと違うことを頼みたい」

大人びた口調でそう応えると勧められもしないのにズカズカと事務所の中に入っていき来客用のソファに腰を落とした。名無しはその場で首を傾げてから、向かいのソファに座った。

「まず、これが報酬だよ」

いつの間にかテーブルには小ぶりな鞄が置かれていた。それを名無しの目の前で開いてみせる。中には一万円札がぎっしりと詰まっていた。見たこともない大金に名無しは息を吞む。

「一千万円。これで君に二週間僕の代わりを演じてもらいたい」
「こんな子供がどうやってこんな大金を…?」
「僕は見た目通りの子供じゃないよ。それより依頼内容聞いてた?」
「え、ええ。聞いてたけど、よく意味がわからなかったわ」
「僕は三人の息子の父親なんだけど、しばらく父親をやめたいんだ。息子たちから離れて一人になりたい。その間僕の代わりに父親を演じてほしい。いや、君は若い女性だからお姉さん、という体でいいな」
「ますます意味がわからないわ。なんであなたのような子供が三人の息子の父親になり得るのよ」
「だから、僕は見た目と実年齢が一致してないんだよ」

信用できない、という顔で少年を見ると、少年はニヤリと笑ってこう言った。

「報酬が欲しくないの?儲かってないんだろう?」
「ほ、報酬は、欲しい…」
「じゃあ契約成立だ。僕はトロン。僕の息子たちをよろしくね」

名無しは戸惑いつつも報酬欲しさにこの不思議な依頼を受けることにした。トロンの家の場所や息子たちの特徴などを聞き、明日からトロンの代わりを務めることになった。


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