ごちゃまぜ

□amas d'etoiles couleur sepia
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彼女は奔放な人間だった。華のある女性で、私に人生を彩るということを教えてくれた。


「ドルベの部屋は無機質すぎる。」


最初に私の部屋にやってきた時、彼女が放った一言だ。その数日後、彼女がどこからか買ってきたオブジェが窓際に置かれていた。原色のプラスチックでできた、猫だか兎だかよくわからない形の小さな置物だ。垂れた目と口角を上げた口が描かれている。



「こんなもの必要ないって思ってるでしょ。そうよ。何の必要もないただのガラクタよ。でも、なんでもないふとした時にこの子が目に入る。おもしろくもなんともない時でも、この子が目に入るとちょっと楽しくなるわ。本当にちょっとだけだけど。そういうの、私は幸せだと思うの。」



正直なところ、彼女の言ったことは今でも本当に理解したとは言い難い。だが、彼女が飾ったこのよくわからないオブジェのことは、彼女同様に愛おしく思う。



「家族とうまくいかなくて。どうしてかはよくわからない。たぶん、私がワガママだからかな。ううん、そりゃあ、私だってできれば仲良くしたいって思うわよ。でもあの人たちに合わせて自分を殺すくらいなら、縁を切った方がマシかなって。後悔なんかしてない。でもね、一人は寂しい。だからドルベがいてくれて嬉しい。」


彼女はどんな困難にも立ち止まらない。一人でも生きていける強い人間だ。それでも私と一緒にいることを選んでくれた。ただ寂しさを埋めるのに私が適任であっただけだとしても、それでも私には十分だった。どんな理由であれ彼女が私を必要としてくれていることが嬉しかった。


「君が愛しいと、そう言ってもいいだろうか。」
「ドルベのしたいようにすればいい。」


彼女は寂しそうに笑った。今思えば、きっと彼女は困っていた。いや、本当は最初からわかっていた。しかし気付かないふりをしていた。彼女が私を悲しませまいとと心を砕くのをいいことに、都合よく名無しを解釈していた。(そして今なお私は同じことをしている。)


「あなたとはもう一緒にいられない」


彼女は泣いていた。私は引き留めることができなかった。どうしていいかわからなかった。仮にあの時引き留めていたとしても無駄だったに違いない。彼女は猫のように自由なのだから。だが彼女はいつか必ず帰ってくる。根拠のない希望は今も消えることがない。



彼女は根無し草をやめて、遠い地に落ち着いたと聞いた。彼女と一緒にいる者のことも聞いている。私は用もなく人間界に来ては、一人で寝るには大きすぎるベッドに横たわり、窓際の猫のような兎のようなオブジェに目を向ける。


「そんなに気に入ったの?あの変なオブジェ」
「ああ。君が飾ってくれたからだ」


からかうような笑い声は幻だ。まだ彼女の姿は見えない。


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