ごちゃまぜ

□世界は二つに引き裂かれ、他方が一方を滅ぼすだろう
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ミザエルが初めて名無しに出逢ったのは、九十九遊馬が通う学校を訪れた時であった。

最初ミザエルはギラグたちの様子を見るため彼らがアジトにしている体育倉庫に現れたのであるが、そのあまりの汚さに閉口した。そこは学校の施設ではあるが滅多に使われない場所で、まるで掃除が行き届いておらず、その上二人が食い散らかした弁当やら菓子やらのゴミがそこかしこに散乱している。見た目も酷いし、何より埃と食べ物の匂いと汗臭さが混ざった淀んだ空気に胸が悪くなる。よくもこのような場所で過ごせるものだ。一秒たりともこんなところにいたくない。ミザエルは二人に悪態を吐きほとんど会話もせずに、少しでもマシな空気を求め体育倉庫から外へ踏み出した。

人間の世界の空気はバリアンであるミザエルにとって決して清浄に感じられるものではないが、この時ばかりは外気の涼しさが心地よく感じられた。肺に溜まった穢れを吐き出すと、かすかな緑の香りがミザエルの鼻腔をくすぐった。この香りはどこから漂ってくるのだろうか。少し歩くと背の低い灌木が植えられている場所に出た。鮮やかな深緑が日差しを浴びて金色に輝いている。息をついてそれらを眺めていると、灌木の反対側から足音が聞こえてきた。近付く足音に目を向ければ、やがて緑の合間から一人の女子生徒が現れた。彼女が名無しであった。



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