短編A
□サムライブルー
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「明日は四時に起きる」
そう言って、イタチさんが早々と床に着いたのは午後八時。
一人で寝て、一人で起きてくれる分は全然構わないんですが、寝る前に私の目覚まし時計を三時半にセットするの止めてもらえませんかね。
えぇ、おかげ様で、まだ太陽も昇らない内にバッチリ目が覚めましたよ。
何が悲しくて、こんな早くから朝食の準備なんかしなくてはいけないんですかね。
「おい、鬼鮫。お茶と団子」
「はいはい」
ふてくされながら、卓袱台にドンっと大きな音を立ててお茶を置く私になんかお構いなしに、イタチさんはテレビに釘付け。
えぇ、えぇ、分かっていますよ。
イタチさんがこんな早朝に起きた理由。
それは
ワールドカップ。
あのうちはイタチともあろう人が、そこら辺りの若者連中と同じくワールドカップに夢中なんて…
私は情けなくて涙が出て来ます。
まぁ、ユニフォーム着たり、顔にペインティングしていないだけマシですがね。
試合開始前だと言うのに、食い入るようにテレビを見ているイタチさん。
テレビ画面には日本のサポーター達が映っていた。
「惜しいな…」
「え?」
試合はまだ始まっていないのに、惜しいとは?
「お前がもう少し濃いかったら、あれと同じ色だったのに」
イタチさんが指差したのは、テレビに映る日本のサムライブルーのユニフォーム。
「あの…イタチさん。私別に日本を応援する為に体に色が付いてる訳ではありませんから。それに、サムライブルーより私の体の方が先に青いですから」
切れ気味に返事をしてもイタチさんはどこ吹く風。
「サ…」
何か言いかけたと思ったら、プッと吹き出す始末。
「何笑ってるんですか?」
「サメダイブルー」
「はい?」
全く持って意味不明。
何ですか
サメダイブルーって。
サムライブルーと掛けたつもりなんでしょうけど、全く笑いどころがないんですけど。
あれですか?
もしかして、ダイってdieのダイですか?暗に私が本編で死んでしまっている事を言いたいんですか?
え?では、ブルーは海を意味してるんですか?
な〜るほど
って感心する訳ないでしょう!
と、私が心の中で葛藤している間も、イタチさんはツボにハマったらしく、肩を揺らして笑っていますよ。
そうこうしている間に、テレビから試合開始のホイッスルが響き始め、イタチさんは再びテレビにかじり付いた。
やれやれ…
私の戦いは、まだまだ先が長そうですね。
がんばれ!日本
がんばれ!鬼鮫
end
私達は日本代表と干柿鬼鮫を応援しています。