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□I Bless Thy Life
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『あんたがいつどこに帰ってきても、すぐに私を見つけられるぐらい輝くから。』


少女は力強く微笑みながら、そう我が輩の背中を押した。



心の臓を貫くような衝撃。胸中で渦巻いていた霧が、一気に吹き飛ばされたような感覚。


(進化の種よ。貪欲なる人間の娘よ。)


実に好ましい。この上ない程の感嘆さえ覚える。

いつか、その種が見事に芽吹くことを期待して、育て上げてきた。


(素晴らしいぞ。)



想像以上、であった。


温かい、今まで感じたことのないモノが胸に込み上げてきて、思わず我が輩は、



「フハハハハハハハハハハハ」


ばふっ



ヤコを、抱き寄せていた。


我が輩の腕の中でヤコは一瞬硬直し、しかし我が輩の衣服をギュッと握りしめた。


思わず、笑みが溢れる。



「よくぞ進化した。」

魔人の心まで遂には捉えてしまうとは。


(……いや、『捉えて』ではなく、『捕らえて』か?)



「もはや貴様をナメクジなどと呼べんな。ザ・ナメクジと呼んでやる。」


「結局最後までその程度!!」


耳に心地よい叫び。

ああ、こんなにも離れてしまうのが惜しい。

できることなら、まだ近くで。もっと近くで。


(その進化を。)


ヤコの頭を掴んで、視線を合わせる。気の強い琥珀の瞳。

随分と、美しい。


「留守は任せたぞ、相棒。」


「うん、相棒。」



貴様は何処まで進化する?何処までその羽を広げる?



(楽しみでならんぞ。)


なあ、愛しき相棒よ。





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