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□残された者達
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―ネウロはさ、誰かを好きになったことってある?
貴様は遂に脳味噌が豆腐になったのか。…いや、元々その頭蓋の中には豆腐が詰まっていたのだったな。それは失礼した。
―何そのいわれの無い言葉の暴力!?
―ま、まあでもそう言うってことはやっぱり好きになった人っていないんだ…。
当たり前だ。我が輩腐っても魔人。そのような感情は生憎持ち合わせておらん。
―そう…。
で、いきなり何なのだ?このような話をしてくるとは。
―うーん、何でだろうね?
何だ、それは。
―無駄な質問だったかもしれないってこと。
ほう、その無駄な質問で我が輩の思考を乱れさせたと。
―ちょ、その手しまってしまってっっ!
その無駄が人間には大切なんだってば!!
無駄が大切?
―あ…う、うん。例えば…お墓、とか。
ああ、あれは無駄だな。
―そ、即答ですか…。
我が輩には全く理解出来ん。死んだ者はただ腐りゆく肉塊と化していくだけだ。それを何故美化しようとする?
―そうだね…。でも、そうすることで人間はその人を忘れないで乗り越えていくんだよ?
―それは、進化とは言わない?
いや、それはひとつの進化だ。例えどれだけ小さくとも、進化には変わり無い。
―でしょ?
だから、無駄は大切何だよ。
貴様の言うことは、時々よく分からん。この問答も、それこそ無駄な時間でしかないような…。
―でも、いつか私の言ったことが分かる時がくるかもしれないよ?
…!
―人間はそうやって、無駄だと思うことでも吸収していって、そうして自分の血肉にするの。
―今まで経験したことを何一つ忘れずに、無駄なことを繰り返してくの。
―ネウロは、理解してるよ。もう。
『忘れる事はつまり進化をも忘れる事』
『忘れるなヤコ
貴様も何一つ忘れるな』
―ネウロは似たようなこと、かつて私に言ってるからね。
―ふん…。
―だからさネウロ。ネウロも私のこと忘れないでね。
―忘れないでね―
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