捧げもの

□懇願
1ページ/3ページ





「答えてみろ、この豆腐が。」


単純に怖かった。


瞳をぎらつかせ、今まで見たこともないような表情で、顔を歪ませるネウロが。


「答えられんのか?」

やはり貴様は豆腐だな――

吐き捨てられた言葉に、ただ悲しくなった。


それは、この化け物に自分自身を否定されるようなことを言われたからじゃなくって。

「何か言え、ヤコ……っ!」


(っっ……!!)


激昂したネウロの声と共に、首を掴まれて宙吊りにされた。苦しい。


ネウロの瞳は熱情に彩られ、寒気を感じる程の色気さえ感じられた。

呼吸が、上手く出来ない。

(ネウロ、)

何も紡ぐことの出来ないこの唇が、声帯が、心が、もどかしく。


「答えろ、ヤコ…」


やっと首から圧迫感が失せ、私はソファーに放り投げられた。


(ネウロ、)

せめて名前を呼んであげたいのに、私はソファーの上で激しく咳き込むことしか出来なかった。

(痛いよ、ネウロ。)


咳き込みながら、私はネウロを見る。


苦しそうなネウロ。
悲しそうなネウロ。


そして何も出来ない私。


(ごめんね、ネウロ。ごめんなさい……)



そう思うのに、唇がほんの僅かに震えるだけ。

それを見て、ネウロがまた顔を歪めた。


「何故、だ。」


(ネウロ、もういいの。)

あんたが悪いんじゃない。ネウロは謎を食べたかっただけ。本能に従っただけなんだから。


ねえ、ネウロ、だから――。


「何故、貴様は我が輩を責めんのだ!」


(違う、よ。)


悪いのは、私。
ネウロのせいなんかじゃない。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ