捧げもの

□甘き嫉妬
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「…………はい?」


(またか。)


事務所の中。我が輩は調子の変わったヤコの声に、無性に舌打ちしたくなった。


ソファーに座り、依頼人に応対しているヤコに視線を向けると、明らかに困ったような表情で話を続けている。


我が輩は、そっと息を吐き出した。





―――――――――――

一ヶ月前、我が輩はヤコと再会した。

我が輩は出来るだけ早く帰ってきたつもりだったが、地上では既に三年も経過していたらしい。


その月日の中で、我が愛しき相棒は更なる進化を遂げていた。


語学力を磨き、人の心理を学び、様々な経験を自らの血肉とし。




(そして。)


目の前で依頼人と話を続けるヤコをじっと見詰める。


三年前よりいくらか伸びた、金に近い栗色の髪。きめ細やかな真白の肌。全体的に丸みを帯びた、柔らかな肢体。そして、変わらない……いや、更に輝きを増した、その強い琥珀の瞳。


再会したヤコは、一人の女としても、目を見張る進化をしてみせていたのだ。

無論、そんなヤコを世の男共が放っておく筈もなく。


「ですが…。」

「いいじゃないですか。お互いの親睦を深める為にも……ね?」


依頼人の男は、気障ったらしい笑みを浮かべて、ヤコに盛大にウインクを飛ばしていた。

それを取り敢えず笑って誤魔化すヤコ。


……苛々する。相手の男は、依頼にかこつけてヤコを食事に誘っている。ヤコの目が心なしかとろんとしているのが分かる。
そんなに生ゴミを喰らいたいのか、貴様…。

「では、日にちはいつ頃がいいですか?質、量共に超一流のレストランをご用意しました。桂木先生にもご満足いただけると思います。」

そう言って男はあろうことか、机にそっと置かれていたヤコの手に自分の手を重ね合わせた。



ぷつり、と我が輩のどこかで何かが切れる音がした。


すたすたと男に近づき、その手首を掴んでヤコの手から引き離す。

「ネウロっ!?」
「っっ!」


男は我が輩を睨み付けてくる。

……生意気な。


「何するんだあんた!」

「……先生はお忙しい身の上なのですよ。あなたのお相手さえ出来ない位に、ね。」


あなたもご存知の筈ですよね、と付け加えて、いつもの好青年の笑みを張り付ける。



……男の表情が凍りついた。




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