ねぇ、答えなんて初めから決まってたのかもしれないね。



[貴方と私の笑顔の為の結果論]







息を吸った。
神聖な場所の筈なのにどこか腐敗臭がする。
見渡す限りの柩の海から溢れでたのだろうか。
誰にも知られずに漂いながら腐っていった哀れな「私」達から。


ヒトである事を捨てた愚かな翼をもつその天使が、最後の封印を言い渡す。
決断しろということなのだ。彼から告げられた3つの選択肢から、たった一つだけを。


私の背中に与えられた愚者の印を広げて、最後に後ろを振り返る。
6つの瞳。その全てが諦めていた。辛そうに歪んでいても、結局。
私を諦めている。



見下ろしている神の使いに笑みを溢した。
全部、全部。


閉ざされた声の代わりにただ心で彼を呼ぶ。



ミトス、答えは出たよ。




私が消えて喜ぶ世界なんて。


全部、全部。










「…消えちゃえばいい」









ぶわ、と光が降った。
小さな悲鳴をあげて燃え尽きた羽が散る様は、昔読んだ聖書の中みたいに美しく、醜い。


背後からも聞きなれた声が断末魔の叫びをあげた。
振り返る気にはならなかった。焼かれて溶けて消えても、もうどうでもよかったから。







「…ほら、ヒトなんて馬鹿げてるだろ?」




頭の上から降ったその声に、ただ微笑みを返した。














ねぇ、大好きだったんだよ。
本当に守りたかったの。
でも、駄目だった。
貴方の言葉は私を救ってくれたけど、貴方は何もしてくれなかった。
貴方がくれたのは私を殺す言葉だけ。
結局私を殺して世界を選んだの。

だったら初めからいらなかった。
偽善的な慰めなんていらなかったんだよ。


みんな、みんな、私に死ねって。
毎日が辛かった。狂ってしまいそうだった。

私を殺す世界なんていらない。
私が消えて喜ぶ世界なんていらない。


もう、いらないの。










答えなんて初めから決まってたのかもしれないね。









2007.

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