小話倉庫弐(後ろがNEWです)

□よい夢を
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忍だって夢を見る。

短時間で熟睡し、気配を察すれば即座に覚醒する。

そんな訓練を受けた身でも、時には夢を見る。





ビンゴブックの相手を殺めた夜に、真っ赤な影に追われる夢を。



闇に呑まれたサスケが木ノ葉に襲い来る夢を。



大切な兄の亡骸が藻屑のように崩れる夢を。



サクラが、カカシが、大切な仲間が倒れ、守れずに泣き狂う夢を。



声にならない叫びで飛び起き、夢だと気付く瞬間、治まらない鼓動、吹き出る汗、夢に安堵するよりも悲しみに押し潰されそうになる、その刹那に。



「大丈夫?」


サイの声が。


「お前こそ、大丈夫か?」


ナルトの声が。




聞こえた瞬間に、ようやく悪夢から解放される。




「怖い夢を見てたんだ」

「オレも…」

「ただ怖いだけじゃなくて…」

「悲しかったんだよな?わかるってばよ」



そう言い、顔を見合わせて、それから互いの胸元に触れる。



激しく波打つ鼓動が、少しずつ、少しずつ、穏やかにそして緩やかになり、やがて平静を取り戻すまで。

互いを労るように、ただそうして待っている。

平静さを取り戻し、それからようやく頬に触れ唇を落とし、髪を撫で胸元を合わせ、体温を重ね合わせる。



「もう大丈夫だよな?」

「ナルトもね」

「おう」





忍だって、辛い夢を見る夜がある。


辛い夢を見る材料なんて、幾らでも持ち合わせているから。


乗り越えた筈の過去も、意識下に眠る懊悩も、夢の中で突如として形を表す夜がある。


そんな時に、サイがいてくれるから、ナルトがいてくれるから、互いにそう思い合えていることが救いになる。



「もう一回寝直すか?」

「そうだね、夜明けにはまだ早いようだし」


今度は悲しい夢に取り込まれることなど、ないように。


「おやすみ、ナルト。よい夢を」

「ああ、おやすみってばよ!サイ、いい夢見ろよ!」

「うん、今度は君と仲良くしている夢をね」

「バーカ、それは夢じゃねェ、ゲンジツだってーの!」




そうだ、今度は、きっと。

よい夢が見れそうだ。



手をそっと握り合って、二度目の眠りにつく。





よい夢を、おやすみ─────







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3/11から、なかなか時計が進まない中。

何かを書こうとすれば、浮かぶのはシリアスな話ばかり。

無理やり明るい話やギャグやラブラブを書こうとしても、結局何も出来ず。

10日が過ぎ、やっと、心に浮かぶものを素直に文字にしようと思えるようになりました。






ある夜、二人同時に悪夢にうなされ、そして二人同時に目覚めて。
落ち着きを取り戻す中で、互いの存在を確認しあう。


君がいるから大丈夫

お前がいるから大丈夫


そして安堵の吐息をつき、安心して眠れるんです。



よい夢を、と。





安心して眠れる夜が、一日も早く訪れますように。




そう願いを込めて。








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