小話倉庫弐(後ろがNEWです)

□君とメリークリスマス
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ナルトは機嫌が悪かった。

今日は12月25日。
世間はクリスマスでそれなりに盛り上がっている。

「キリストの誕生日なんて日本人には関係ないっつーの!」

などと文句を言いながらも、ナルトは目の前を通り過ぎる幸せオーラ撒き散らし中のカップルが羨ましくて仕方がなかった。
きらびやかなイルミネーション、定番のクリスマスソング、町はクリスマス一色に彩られている。

「フン、クリスマスクリスマスって騒いだって明日になった途端に門松とかしめ飾りに代わるんだからあーんなに色々飾ったってもったいないだけだってばよ!」

「ちょっとナルト!グダグダ言ってないでちゃんと働きなさいよ!」

「わ、わかったってばよ、サクラちゃん〜」

白の縁取りをした真っ赤なワンピース姿で、クラスメートのサクラがナルトを睨んでいる。

「アンタの仕事はいっぱい目立ってお客さんをこっちに連れてくることなんだからね。わかってる?ほら、愛想振りまきなさい!」

そう言い放ち、サクラはナルトにはけっして見せないような笑顔を振りまき始めた。

「いらっしゃいませー!美味しいクリスマスケーキ売ってます〜」

そして肘でナルトを小突けば、ナルトも無理やり笑顔を作って手を振って見せた。

「あ!トナカイさんだ!」

そう言って小さな子供が嬉しそうにトナカイの着ぐるみ姿のナルトに駆け寄ってくる。
子供ウケのいいナルトの隣で、サクラが母親にケーキを勧めている。

「私たちのクラスで手作りのクリスマスケーキを販売しているんです。お金は全部児童福祉施設へ寄付しています」

そう言うと大抵の親は興味を示してくれる。
そしてケースに並んだ高校生の手作りには見えないような見本に驚き、しかも価格もお手ごろということで買ってくれる人も多いのだった。

「ありがとな!」

ナルトが手を振ると、子供は大喜びだ。

「アンタって子供にはモテるわよね」

「あんまり嬉しくないってばよ、サクラちゃん…」





ナルトやサクラの通う私立木ノ葉学園ではクリスマス恒例の行事として、様々なボランティア活動を行っている。
基本的にはクラスごとの活動となるが、生徒それぞれの得意不得意もあるため、他クラスや他学年から助っ人を呼んだり助っ人として参加したりと自由度は高かった。
ナルトたちのクラスは隣のクラスと合同で、学園前の敷地を使って12月24日と25日の二日間クリスマスケーキを販売し、その売上金を木ノ葉学園が経営する児童福祉施設に寄付するという活動を行っていた。

クラスメートたちはそれぞれが役割分担している。

「せめてサンタクロースがよかったってばよ…」

「あきらめがワリィぞ、ナルト」

同じくトナカイスタイルのキバが肩を叩く。

「サンタクロースならチョウジより似合うヤツはいねーもんな」

「まあ…そうだけどよ〜」

シカマルは裏方で材料費の計算、シノはひたすらケーキの箱を組み立てているらしい。

「ナルト、ところでサイはどこ行ったんだよ?」

「知らねー…」

キバからサイの名前が出た途端に、ナルトの声が不機嫌になった。
昨日からサイの姿を見かけていない。
サイの行方なら、こっちが聞きたいくらいだ。

他のクラスメートと違いサイは実質ひとつ年が上だった。
それは海外留学をしていたというやむを得ない理由だったのだが、どこかサイは他のクラスメートとは雰囲気が異なっていた。
それでも同じ班になって、ナルトは彼と仲良くなっていた。
信頼もしていたし、大切なクラスメートで、そして特別な関係でもあった。


だのに、サイはいない。


ナルトはガッカリしたというより、サイに裏切られたような気がしていた。
ひとつ上の学年ではクリスマス企画として高齢者施設を訪問し、朗読会を開いているのだと聞いている。
よく知る先輩であるネジ、テンテン、リーはこの朗読会に参加している。
サイもそっちへ行ってしまったのだろうか。
確かにサイの性格を考えれば、間抜けな格好をしてケーキを売るなんていうのは似合わない。


けどよ…それじゃ一緒にいられないじゃねーか。


夜21時までケーキを売った後、皆で打ち上げをすると聞いている。
そして22時になったら解散、あとは自由行動だ。
夜中にウロウロすれば見回り組の教師たちに怒られるので、皆それぞれ家路に着くなりこっそり遊びに出かけたり、だ。

「ナルト、打ち上げ終わったら皆でカラオケ行こうぜ!」

「あ…う、うん…いや、オレやっぱ、帰る」

「なんだよ?予定なんかどうせねーんだろ?」

「ほ、ほっとけってばよ!」

キバに突っ込まれて、ナルトはプイと横を向いた。


なんでお前はいねーんだよ、バカサイ…。


サイがいれば、打ち上げのあとは一緒に過ごせたのにと思う。
高齢者施設を回っている組はバス移動でかなり遠くまで出向いていると聞いている。
帰りは遅くなるからきっとそのまま生徒一人一人を送っていくのだろう。
今夜はとても会えそうもない。
ナルトは大きく溜め息を吐いた。







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