オリキャラ短編2
□終夜
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さやか
それが私の名前だった。
その名を捨てたのはあの夜。
あの、愛しい人を殺した、あの夜。
「さやか!」
明るい声だった。
あの人が私の名を呼ぶときは、いつも。
どんなときでも、底抜けて明るい声で、さやか。そう呼んだ。
いつしかその声に、胸が高鳴るようになった。
その姿に、憧れた。
「これより、契約の赤い鐘を実行する」
そう高らかに叫ぶ背中を、いつもじっと見つめていた。
今思えば、あれは恋だったのだろう。
少女だった、と思う。
ただただ純粋に、追いかけて、追いかけて。
掴めると信じて疑わなかった。
その穏やかな幻想が打ち砕かれたのは、きっと、宿命だったのだろう。
抗えない、絶対的な運命に縛られて、私はそのまま、傀儡のように自らで、自らの平和を打ち壊したのだ。
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