TiTle

聞こえるのはうるさい鼓動と、放課後の教室と君
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恋愛には向き不向きがある。
私は多分後者の方だ。

「神楽ちゃん、ココ漢字間違ってるよ」

「どこアル?……あっ本当ネ!ありがとうヨ」

「神楽ちゃん良かったわね、早く気づいて」

「てかこの間違え単語的にまずいでしょ」

危なかった。だって高校名の魂が玉になってるんだもん。

10月は私たち高校3年生にとって大切な時期。神楽ちゃんは推薦入試の願書を書いている。私は大学センター、妙ちゃんは就職だからとりあえず来週の中間試験の勉強をしていた。

神楽ちゃんに「きっと間違えるから見ててほしいアル」と頼まれてこうして放課後に三人でお菓子を広げつつ女子会をしている。

「よっしゃ出来たアル!!これで合格間違いなしネ!後は進路の先生の所にチェックしてもらうだけヨ」

願書を封筒に入れて神楽ちゃんは堂々と机に足を乗せて見せてくれた。それを見て私と妙ちゃんは拍手をすると神楽ちゃんは得意げに笑った。そこは沖田くんの席なんだけどな。

「良かったわ間に合って。じゃあ私も職員室で提出する物があるから一緒に行きましょう。四季ちゃん待っててくれる?」

「よし姉御行くアル!四季、良い子にして待ってるネ!ポッチーは残しておけヨ」

「うん分かった。いってらっしゃーい」

あれ?わたし犬みたいじゃない?
そんなことを思いながらひらひら手を振った。2人が教室を出て行くと一気に静かになった。

外では夕焼け放送が流れている。時計を見ると5時を過ぎていて、2人が職員室に行ってから随分時間が経っているのに気がつく。

「妙ちゃんと神楽ちゃん遅いな」

勉強も飽きたし本でも読むかとポッチーを一本手に取った時、聞き慣れたスリッパの音がしてドキリとした。

「オイそろそろ帰れー」

教室に入ってきたのはクラスの担任、坂田銀八だった。

何コレ神様いたずらしすぎじゃない?今確実にわたしの表情がひきつったのは理由があるのだ。

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