TiTle
□簡易ランデブー
1ページ/1ページ
江戸が天人に開け渡って気温が年々確実に上昇していると思うのは私だけじゃないはず。
「土方さーんあつーいー」
「お前はまず仕事してから言え」
「してますよ〜ほらちゃーんと見回りしてるし、おじさん路上タバコダメだよ〜」
「そんな生温い注意で聞くと思ってんのか。オイコラ路上タバコ禁止だ。すぐ消せ」
「土方さんには言われたくないと思います。そんなんだからチンピラ警察って言われるんです」
本当に土方さんは細かい。
沖田さんと私がいつもサボるからとここ一週間ずっっと土方さんと街で見回りランデブー状態。そう言ったら叩かれた暴力上司め。
ついでにこのくそ暑い日に隊服をきっちり着こなしている土方さんは絶対におかしいと思う。言わないけど。私は同じ服でも上着を脱いで腕まくりしてスカーフを取ってるって言うのに。
「こんな夏日に注意されても聞く人なんて居ませんよ。それよりコンビニ行きましょ!」
「ふざけんな、そうやって今までサボってたんだろ」
「……何回かです。沖田さんは毎日ですよ」
「信用できるかよ」
そう言うと土方さんの携帯が鳴った。
土方さんが時々発する「総悟が?」「しっかりしてくれよ近藤さん」の言葉にすぐさまピンときた。
「沖田さんですか?沖田さんですよね?」
「その顔腹立つからやめろ。ったく珍しく当たってやがる。総悟が見回り中にまた居なくなったらしい」
大正解。ため息をつく土方さんの前でガッツポーズをとってやった。でも、今のは聞き捨てならない。
「たまにはまともな事言うのに信用されないなんて!パワハラです!万事屋に訴えてやる」
「たまにはってなんだよ!あと、いちいち万事屋にチクリに行くなよ後で面倒くせえから。ほら行くぞ」
「どこへ?」
「タバコ切れたからコンビニ。つっても自腹な」
「ケチ」とつぶやいたのが聞こえたらしい。ギロリと一睨みされて目に付いたコンビニに入ると待ちに待った冷房が迎えてくれた。
そして各々目的の物を買って車へ戻ると早速アイスを食べ始める。やっぱり夏のゴリゴリくんは最高だわ。
「ゴリゴリくんか?」
「ご覧の通り。土方さんだってゴリゴリくん選んでるじゃないですか」
そう、土方さんの袋の中にもゴリゴリ君が入っている。でも土方さんがもう一つ袋の中からだしたのは、
「ゴリゴリくんは近藤さんにさっき頼まれたんだ。俺はバーゲンダッシュだ」
「ズルイ!!私にもバーゲンダッシュを奢ってください!!」
「お前はゴリゴリくんがお似合いだよ」
「ゴリゴリくんと近藤さんに失礼です土方さんのバカ。あ、当たってる!1本貰ってきます」
「お前ェが近藤さんに失礼だ」と言う言葉を無視して当たり棒をさっきのコンビニに持って行くとまた同じソーダ味を渡された。
なんだかんだで我儘を聞いてもらったからお礼にあげようと思って車へ戻ると土方さんはバーゲンダッシュを食べ終えていた。
「はい、副長にも私の運と幸せ分けてあげます。早く食べないと溶けますよ」
「上から目線か!じゃあこっちはお前が食え」
渡されたのは少し溶けたゴリゴリくん洋なし味。え?なにこのわらしべ長者。私がソーダと迷っていたのを見ていたのかな?そんな訳ないか。
「これ近藤さんにって言ってたやつじゃ」
「近藤さんのは屯所の近くで買えばいいだろ」
「んふふ〜土方さん実は優しいですね」
「気持ち悪ぃ笑い方すんじゃねえよ。ほら溶けるぞ」
いつもうんざりするほど細かい土方さんと暑い日にサボってアイスを食べる。しかも贅沢に2本も!こんな夏も悪くない。
「これ食ったら総悟探しに行くぞ」
「はーい」
Title:casa
2016/07/09 執筆
2016 7月拍手お礼文
.