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□拝啓、元気です
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「また届いてる」
家主が居なくなっても癖になってしまった郵便受けの確認をすると見慣れた封筒があった。
万事屋が解散して2年、私と新八くんは未だに万事屋を営んでいる。
虚との戦いの後、銀時から店をたたむと告げられた。
銀時も神楽ちゃんもやりたい事が見つかったらしい。新八くんはやる事が沢山あるからかぶき町に残ると宣言をし、最後に私も答えた。
「私もここに残るよ」
新八くんと神楽ちゃんは驚いた表情をしていたのを見ながら言葉を続けた。
「まだみんな手助けが必要だろうし、吉原の手伝いも頼まれてるし、お登勢さんのお店の立て直しもあるし、それに「 四季」
銀時から告げられるであろう言葉を聞きたくなくて矢継ぎ早に話していると優しい声で名前を呼ばれ泣きそうになるのを堪えて銀時を見た。
「今までありがとな。これからはおめーの好きにしろよ」
最後に2人で過ごした時、銀時が辛そうな表情でいるんだからなんとなく言われることは察していた。いざ告げられるとこうも心に刺さるのか。でも、私は銀時についてはいけない、いや、ついていってはいけない。これは彼の精一杯の突き放し方なんだ。
「……うん。そうさせてもらう。こちらこそ今までありがとう」
「元気に過ごせな」
ありがとうなんて気遣う言葉なんて今まで一つも言わなかったくせに。言いたかったけれどぐっと飲み込んで笑顔で答えた。
銀時はそれからかぶき町を去る日まで私と2人きりになろうとしなかった。あの日の「あばよ」はいつまでも忘れられない。
好きにしろと言われたけれど私は大好きな万事屋の仕事をやっていた。泣いて過ごすことになるなと思っていたが、2人になった万事屋は大忙しだった。これも新八くんがまじめに依頼をこなしているからだ。お互い悲しんでいる暇が無いくらい忙しい日々を送っていた。
気づけば2年が経っていた。街の景色も元に戻りつつあると同時に依頼も減り、以前と変わらない状態に戻った。私の住む場所は万事屋からお登勢さんの部屋へと移ったが、毎日万事屋へ行き、掃除をしてから依頼やバイトをこなすのが日課になっている。
「四季さんおはようございます」
「おはよう新八くん。今日は三丁目のおじさんのところだよね?」
「はい、確か10時からですよね。またあの手紙ですか?」
すっかりイメージが変わり大人びた新八くんがいつものように階段を上がってきて私が持っているものを見て少しウンザリした表情をした。
そう、郵便受けに入っていた手紙は万事屋銀ちゃん宛てに半年前から1カ月に一度送られてくる。中身は季節の花の押し花だったり、よく分からない石や木の実だったり。差出人が無く、宛先の書き方も毎回違うためグループでいたずらしているんじゃ無いかと私達は読んでいた。
新八くんが毎度中身を確認して「ト○ロかよ!!」と叫ぶのも恒例で、中身が中身だけに通報する訳にもいかず、万事屋の玄関に積んである。
「そうなの。これで何通目かな?」
「10以上になってるのは確かですよ。誰なんでしょうね」
「神楽ちゃんだったら絶対名前を書くだろうし、もしかして新八くんのファンだったりして」
「ふふふふぁん!?そんなっファンだなんて僕に限ってあり得ないですよ!!」
さっきまで大人の表情をしていたのに揶揄っただけで顔を真っ赤にして動揺する新八くんはやっぱりあの頃のままで笑ってしまう。
「相変わらず良いリアクションだね〜流石童貞」
「童貞カンケーないでしょう!?揶揄うのはやめてくださいよ」
「ごめんごめん。でも今回の中身はなんだろね〜」
「とりあえず中入りましょう」と新八くんは玄関のドアを開けて靴を脱いでいた。その後に続きながらいつものように宛名を見ると今回も違う。でもその字を見て何故か私は泣きそうになった。手紙を見つめたまま固まる私に新八くんが気付いて側へ駆け寄った。
「四季さん?」
「新八くん……この字。見たことがある気がするの」
「これ……銀さんの字に似てますね」
やっぱりそうだ。確信したと同時に涙がボロボロ溢れてきた。私も未練がましいがあの男も同じくらい未練がましいようだ。
久しぶりに会いたいな。あばよって居なくなってから起きた色んなことを話したいな、思えば思うほど涙が止まらなかった。
「ホントに馬鹿だなあ」
「あの人の事だからバレないようにっていろんな人に書かせていたんですかね。ホント不器用な人だ」
私の言葉にハンカチを渡してくれた新八くんも笑って答えてくれた。しばらく涙を出し切ると今度は笑えてきた。まさかいたずらだと思っていた手紙が意味のあるものだったなんてサプライズも良いところだ。
「ねえ、今日の依頼が終わったら今までの手紙に入ってる押し花を栞にしようか」
「良いですね!木の実とか石は机に並べておきましょう」
もしかしたらこの手紙は銀時からでは無いかもしれない。でも、銀時は元気にやっているんだと思う。それが分かっただけで十分だ。
依頼を終えて栞を作りながら私達はあの頃の銀時と神楽ちゃんの話をしながらいつか2人と1匹が帰ってきたらおかえりなさいと言ってあげようと約束した。