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神様と私
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私には神様がいる。
中二病とか霊的なものじゃなくて本当のマジの神様。マイゴッドね。

ただ、この神様はちょっと変わってて一応狐の耳と9つの尻尾があるけど銀色の髪に天然パーマ、ついでに死んだ魚のような目をしていてぶっちゃけ神様らしくない。

「なあ俺いちご味って言ったんだけどおつかいもできねーの?チョコとか気持ち萎えるわ〜もう口ん中はいちごの気満々だったよ?どーすんのこの口」

「その言い方腹立つわ!売り切れてたんだからしょうがないでしょ。本当我儘な神様だよね。なら返してください私が食べたいので!」

「あーそんなこと言っていいのかな〜?今日の参拝客の運気全部悪くしてやっからな!鬱憤溜まってんだからよ。つーかここの参拝客恨みつらみか愚痴しかねーのかよ!!こっちまで鬱々とするわ!!」

なんて文句を言うくせに放課後ダッシュで買いに行かされた駅前のシュークリームに一口がぶりと噛り付いている。全く本当に神様なのかと疑いたくなる。

「しょうがないよ小さい神社で薄暗くて古いからお化けが出るって変な噂で誰もこない。ついでに参拝してもご利益もない。そもそも銀時に神様の力全然無いのが原因でしょ」

「ほぼ自分んちの神社の悪口しか言ってねェじゃねーか!!アレ?もしかして遠回しに俺の悪口言ってた?」

「そもそも私はお父さんの代わりで来てるんですぅ!まさかこんな死んだ目をした神様の世話するなんて誰も思いませんよ」

「死んだ目じゃなくて死んだ魚の目な」

「同じようなもんじゃん」

そう。私の通う高校と自宅の間にあるこの神社、元はおじいちゃんが神主さんとして細々と管理していた。けれど先日、持病の腰痛が悪化したのを機にそろそろ隠居したいと神職の勉強をした父に代変わりした。

でも父はサラリーマン。休日しか神社を見れないので神様が怒ってしまうとのことで部活に入っていない私が平日の放課後に掃除などを任されてしまった。

実際は掃除をして神様の銀時のワガママを聞いたり話し相手になる位。参拝客なんて午後は全く来ないのだ。

「お前のじーさんは優しかったぜ。俺の好きな菓子毎日持って来てくれるしよ、隅々まで掃除して数少ねぇ参拝客の相手も丁寧だったし?」

「何が言いたいの?」

「別にぃ?もうちょっと気が利いて愛想良けりゃいいなーって思っただけって痛い痛い尻尾踏掴むなって!!」

「愛想なくて悪うございましたね」

銀時が尻尾を撫でているのを見て私はなんでこいつが見えてしまったんだろうと溜息をついた。

どうやらおじいちゃんには見えない銀時が私には見える。世の中には不思議が沢山あるんだね。

手伝いが始めて1ヶ月が経った頃、掃除をしてたら社の中でジャンプを読んで寛いでいる姿を見て思わず叫んでしまったのを覚えている。

「お前……俺が見えんのか?」

「見えてなければ会話なんかしません。あの、コスプレ撮影なら許可取ってもらわないと……じゃないならホームレスさん?ここ神社なんで立ち退いていただかないと」

「違うからこれコスプレじゃないマジもんだから!!銀さんこれでも神様だから」

「あぁダンボールの神様コスプレ的な?随分ごっちゃごちゃしてますね」

「ちがーう!!一旦コスプレから離れろ。俺はこの神社の神!!祀られてる神様!!ほれココに紋がついてんだろ」

そう言って着物を捲り、手首を見せてきた。そこにはウチの神社の紋がクッキリ入っていた。

「おじいちゃんに聞いてみるのでちょっと待っててください。一応名前聞いてもいいですか?」

「そうかお前あいつの孫か。どうりでしっくり来る訳だ、それなら銀時って言えば通じんだろ」

年齢的にはかなり上なのに見た目は20代くらいで天パ。なのに神様で人間みたいな名前だなと半信半疑のままおじいちゃんへ連絡し祀っている神様の名前を聞くとさっき聞いたそれが返ってきた。

ついでにおじいちゃんのいた頃は社に人が住んでいる気配は無かったらしい。それを聞いてまじかと呆然としながら電話を切った。神様ってこんな簡単に見れちゃうもんなの?

「やっと信じてくれたか」

「神様って本当にいたんですね」

「まー形だけだけどな」

それからまだ疑いが晴れないので社の中でお茶を飲みながら私が頻繁に来る理由を話すと銀時も自分の事情を話してくれた。

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