story


□Lovin pain
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「眠れないの?」

自然に目覚めた。

彼はまだ一度も眠りについていないような目
で、僕を見つめていた。

眠気が引いていくと同時に、まだ夜が明けて
いないことを告げるように、どこかの犬が声
を遠くへ響かせていた。

きっと寂しいのだろう・・・彼と同じで眠れ
ないのかな・・・。

隣の彼に身を傾けると、温もった体がさらに
熱を帯びた気がした。

「睡魔が襲ってくるのを待ってる。」

「・・・そっか。

なら眠れるまで付き合う。」

「ありがと。」

そう囁くとほぼ同時に、彼は僕の首筋に顔を
埋めて口付けてきた。

「そういう、意味じゃ・・・、ない
よ・・・」

こそばゆさを堪えることに必死の僕は、途切
れ途切れな言葉で訴えた。

だけどそれを無視し動じない彼は、もう唇に
触れようとしていた。

「・・・待って。」

鼓動を速め続ける胸を押さえて、しばらく僕
は静止した。

何でこうしているだけで胸が痛むのだろ
う・・・。

いつものことなのに、いつもの彼なのに。痛
みが引かない。

泣きたくなるほどの苦しさに、いつのまにか
彼の肩に額を押し付けて怖気ついていた。

見かねた彼は肩を抱きながら、

「大丈夫か?」と聞いてくる。

「うん、ただ嬉しいだけだよ。」

真実を言った。それが何よりも正しいと思っ
て。

それにしても・・・素直な気持ちを口にする
のは照れる。頬が熱くなっていった。

彼はその頬を指の背で撫でながら、僕に呟
く。

「俺はお前を見るたび、それ以上に好きにな
っていく気がする。」

同じ、と思った。

心の中ではいつも、そう君に囁きかけてる
よ。

喧嘩しても傷つけられても、深い愛情には敵
わない。

好きなんだもの、彼しかいないんだもの、そ
れ以外に理由はない。

「大好き。」

愛しい愛しい彼に、微笑みかけた。









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