Dream =Short=

□スイカ割りバトルロワイヤル
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夏と言えば


青い海

白い砂

澄んだ空



「いやっほ〜!!」
「ちょっ!浮き輪とらないでくださいッスよ〜!」


俺たちは今、海にいる
DAの海だ


「あー!冷たっ!やったな十代!」
「へへ〜!ここまでおいで〜!」


天雅と十代は、仲良さそうに水のかけあいっこだ

俺?
俺は浜辺のパラソルの下だ
日焼けとかマジ面倒くさ・・・


「紅ー!!!」

「ドグホッ!!!」



十代に飛びつかれた



「痛いだろうが!!この馬鹿!!」
「紅も遊ぼう!」
「馬鹿は無視かよ」
「紅も遊ぼうよ」
「天雅まで・・・」

いつの間にか近くにきた天雅にまで誘われる

ちなみに天雅の格好はいたってシンプルな水着だ

上はビキニタイプだが、したはショーパンというかなりボーイッシュな感じだ
こういうときは、やはり女なのだと再認識する
まあ・・・失礼だが


「遊ぼうぜ紅!」
「断る。なんでわざわざ日にでて遊ばなくちゃいけない。俺は最初に断っただろ」
「ええー?」
「じゃあなんでここに来たの?」
「“強引に”に決まってるだろ!ったく、俺は寝るからな」
「あー・・・」


天雅の言葉を無視して、俺はゴロンと横になった



「はーい!みんな聞いてくださいッス!」


「なんだ?」
「さあ?」


寝ている俺は、声で翔だとわかった
周りがどんな状況かはつかめていないが


「これからスイカ割りバトルロワイヤルを開催するッス!」


俺は上半身だけを起こし、半目で翔を見る


「ここにスイカがあるッス、しかしただスイカ割りをしただけじゃつまらない」
「だから、このスイカを割った人には賞品をプレゼントするドン!」


翔の言葉を剣山が引き継ぐ


「はあ・・・つまりは、スイカ割ればいいんだ。誰よりも早く」
「賞品かあ・・・なにがあるかなぁ・・・」
「カードとかかな!?」

ワクワクと二人は賞品を想像するが、なにか大切なことを忘れてしまっている気がする


バトルロワイヤルという言葉を


つまりは、割ろうとした奴に妨害を加えてもOK
さらには戦闘不能にしてもOK

簡単に翔はいったが、考えたらかなり危険じゃないか?


「さあ!スイカは・・・あそこっす!」


と、言いながら指差したのは・・・




「お、俺・・・だと?」




そう、“俺”だ




「どういうことだ翔!!」

「さあ!誰よりもはやくスイカである紅君を戦闘不能に追い込むッス!戦闘不能にした人には豪華賞品が!!」
「棒はここにあるドン!」

翔がウザイほど爽やかな笑みで俺を指す
剣山は棒をその場に大量に置く


「紅、俺・・・豪華賞品ほしいんだ!」
「頑張ってね十代」
「おう!見てろよ天雅!」
「まさか・・・お前!!」

十代がダッシュで棒を取りに行く

「俺も参加しよう」
「万丈目・・・!?」
「僕もやるッス!」
「俺もだドン!」
「翔・・・剣山・・・!!!!」

ドンドン棒へと群がっていく
そして、棒がいつの間にか無くなる


「さあ、スイカ(紅の頭)割りバトルロワイヤル、スタート」



無情にも、ゴンクが鳴った






「てやっ!」
「どあっ!!?」

最初に襲ってきたのは十代だった
俺は腹筋だけで立ち上がる

「流石だな紅!カッコいいぜ!」
「言ってることとやってることがおかしいぞお前!!」

キラキラとした笑みで襲ってくる十代は、どこか恐ろしい

「頑張れじゅーだーい!」
「おう!」

うしろでジュースを飲みながら見学してる天雅に、十代は拳を上げて答える

ていうか、周りに結構人がいるし・・・
俺を襲おうとする人数がハンパない・・・!!

中学の不良時代を思い出すな


「覚悟っ!」
「誰が!」

今度は翔だ
だけどもともと運動が出来ないこいつは、剣が遅い


「お前でいいか」
「へ?」


姿勢を低くして足に力を込め、一瞬にして間合いを詰める

そして、下から手を振り上げて翔の手に裏拳を食らわす


「うわわ!」

「ほいっ!」

クルクルと回転しながら宙を舞う棒を、片手でキャッチする



「覚悟はいいか?翔」


「ヒィイイイッッッ!!!!!」


ドガッ!!!


鈍い音がその場に響き、翔が地面に倒れ伏す




「次はどいつだ?」




俺はいままで一番イイ笑顔で微笑んだ






―――――――――




「いだあああああああああ!!!!!」
「ぎゃあああああああああ!!!!!!」
「どぐほぉぉおおおおおお!!!!!!」

この白い砂浜に響くのは、野太い悲鳴のみだ

「あっはっは!死屍累々とはこのことだな!」
「く・・・くれあ・・・?」

恐ろしげ(というか震えて)に俺を見る十代を、俺は笑顔で見つめ返す

「そうか、次は十代か」
「あ、いや、その・・・」

ゆっくりと近寄る


「いっつもいっつも・・・いい加減にしやがれぇぇええええ!!!!!」
「ぎゃああああああああああああ!!!!!!!」


いままでのうっぷんを貯めて、一気に棒を振り下ろす

そして十代は、パタリとその場に倒れる


「っく・・・予想外にスイカ(紅)が強いッス・・・」
「俺も、戦闘不能だドン・・・」

翔と剣山が憎憎しげに俺を睨む


俺はニヤリと恐ろしげな笑みを浮かべて翔と剣山に向き直った



「てやっ!」
「あてっ!」


頭に鈍痛、だけどそこまで酷いものではなく
後ろから急にやられたので、後ろを振り返る


「て、天雅・・・」
「あれ?ダメ?」


天雅がいつの間にか棒を持って俺の後ろに立っていた
ていうか、なにしてんだお前・・・

「私を襲わないの?」
「人聞きの悪いこと言うなよ・・・さすがに女子供には手は出さねぇよ・・・」


キョトンと俺を見つめてくるので、俺は項垂れて棒を落とした

それを驚いて翔と剣山が見て、うつ伏せのまま上半身を起こして叫んだ


「あ、く、紅君が棒を落とした!もうこの際これが戦闘不能でいいッス!」
「優勝は天雅先輩だドン!!!!」


その言葉に、俺と天雅は顔を見合わせて頭にハテナを浮かべた

「え?」
「はあ?なんでだ?」
「状況を見るッス!紅君のせいで周りは死屍累々!僕達もッス」
「戦闘を行える人物は無し・・・それに天雅先輩は紅先輩に一発頭に当てたドン!いままで誰も当てなかったのに!」

そう言われてみれば、確かにそんな感じもする・・・
頭の痛みは、天雅が加えたもののみだ


「よって優勝は天雅さんッス!・・・」
「おめでとうだドン!!・・・」


そして二人は、地面に倒れ伏した



「・・・いいのかよ」
「やったー!優勝だー!賞品手に入っちゃったー!」
「まあ・・・いいか」


俺の怪我も軽微だったし
天雅は楽しそうだし、周りは・・・惨劇というか、そんな感じだが


いい思い出だな、夏の






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