dream =short=

□其の二
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「用意は、良いみたいだね」





「へへっ。いつまでも待たせちゃ、相手に失礼ってもんでしょうよ?」





「とりあえず、黙って僕にやられた方がいいよ?」





「何言ってんの?そっちこそ、僕様とシェスさんに負けて、思いっきり泣かされるの、楽しみにしてなよ?」






両ペアの間に、激しく火花が飛び散る。






「それじゃあ、いくよ!バトルスタート!!」






ワタルの掛け声で、とうとうバトルの火蓋が切って落とされた。

全員、同時に手にしていたボールを宙に投じる。






「さあ、行ってこい!カイリュー!!」





「メタグロス!頼んだぞ!!」






現役チャンピオンペアが出したのは、彼らそれぞれのエースとも言える2体。

その巨体は、地面に大きな影を落とした。






「琥珀!任せた!!」





『任された!!』





「やっぱここは相棒でしょ!行っくぜ、ルーン!!」





『フッ、久々に骨のある相手じゃないか。腕が鳴るねぇ』






やはりサクとシェスも、己の相棒であるポケモン、マグマラシの琥珀に、アブソルのルーンを出した。

先程の2体に比べ、随分と小柄な2匹だが、バトルに対する気合は十分だ。






「さあ、こっちから行かせてもらうよ!カイリュー、マグマラシに≪アクアテール≫だ!!」





「琥珀!跳んで回避!!」






先に動いたのは、ワタルのカイリュー。

高らかに咆哮すると、その巨体からは想像できないほどの素早さで、一気に琥珀まで迫ると、その頑丈な尾に水流を纏わせ、琥珀目掛けて勢い良く一撃を叩き込む。

無論、サクも、そう簡単にはやられまいと、琥珀に回避を指示し、何とかダメージを防いだ。

空中で身動きが取れない琥珀を庇うように、間髪入れず、シェスの攻撃指令が空を切る。






「≪れいとうビーム≫!!」






シェスの指示を読んでいたかのように、その声と同時に、ルーンの口から、冷気が1本の線となって放たれる。

カイリューはその一撃に気が付き、瞬時に体を回転させ、ダメージを回避しようとしたが、僅かに間に合わず、その体を掠めた。

その時。






「やはりシェスのアブソルは厄介だな…メタグロス!≪アームハンマー≫!!」





「そう上手くいかないのが人生さ!≪かえんほうしゃ≫!!」





「援護だ琥珀!同じく≪かえんほうしゃ≫!!」






回避したカイリューと入れ替わるように、ダイゴのメタグロスが、ルーン目掛けてその鋼鉄の腕を振り下ろした。

ルーンは自分の判断でそれを躱すと、シェスの指示に合わせ、今度は口から火球を吐き出した。

更に琥珀は、空中にいながら、メタグロスに向けて火球をぶつける。

突然の反撃と、予想外の位置からの援護に、メタグロスは対応し切れず、2匹の炎に飲み込まれ、大ダメージを負う。

それを、マズイと判断したワタルは、カイリューに再び指示を出す。






「カイリュー!≪みずのはどう≫だ!!」






カイリューが吐き出した水流が、メタグロスに纏わり付いていた炎を消火し、琥珀とルーンに襲い掛かる。

ルーンはそれを察知し、素早く避ける事に成功したが、着地直後だった琥珀は、避けきれずに、その水をもろに浴びてしまった。

ダメージを負った琥珀に、水流の第二波が襲い掛かる。





「琥珀!?」





「くっ!ルーン!!」






シェスが名を呼ぶと、ルーンは指示を受ける前に行動に出た。

辺りの空気を瞬間的に凍らせ、氷の結晶をに暴風を纏わせる。

…いわゆる、≪ふぶき≫という技だ。



極寒の冷風に、カイリューが起こした2発目の水流もたちまち氷結、氷の柱と化し、その攻撃は何とか琥珀に当たらずに済んだ。

だが、ルーンによる怒涛の反撃は、こんな物では終わらない。






「切り裂け!≪かまいたち≫!!」






ルーンの周りの空気が、轟音を立てて渦を巻き、直後、その風は刃となり、氷柱を打ち砕くと、そのままカイリューとメタグロス目掛けて一直線に切り掛かった。

更に、砕かれ、暴風に巻き込まれた氷の飛礫が、刃と共に鋭い槍のようになって、2体に襲い掛かる。

それを見たワタル達は、予想外の反撃法に驚愕し、サクは、まるで舞い踊るかのように華麗に、しかし勇ましく戦うルーンの姿に、何か、胸の奥で熱くなるのを感じていた。

そして彼女の視線が、よろよろと立ち上がろうとする琥珀に向く。






「琥珀!立て!!シェスさん達に負けてられないだろ!?」





『っ…全く…無茶言いやがる…!!』






反抗的な態度を取りながらも、サクの呼び掛けにしっかりと答え、琥珀は己の足で立ち上がる。

琥珀は、その脚にグッと力を込め、高く跳躍すると、口内に、ありったけの炎エネルギーを凝縮し、ルーンが起こした、荒々しく吹き荒れる風の渦に向け、エネルギーを放った。

すると見る見るうちに、渦が炎を纏い、天を貫かんばかりの火柱と化す。






「うおっ!ルーンと琥珀の合体技ってやつ!?」





「かもしれませんね!!」






バトルに集中していて、互いに視線を交える事はしなかったが、何となく、相手が自分と同じく満足気な笑みを浮かべているのだろうと、容易に予想できた。



やがて、炎が消え、そこには、完全に戦闘不能となった、カイリューとメタグロスの姿があった。

これが意味するのは、ただひとつ…






「…驚いたな、マグマラシにあれだけのパワーが残ってたなんて思わなかった……」





「さすがシェスのアブソル。あの一撃に耐えられる風を起こせるなんて…あーあ、これは久々に完敗だ」






自分達で負けを認めたワタルとダイゴ。

その表情は悔しげではあったが、同時に、どこか満足そうだった。










先輩と後輩
共同戦線編



(よっしゃ!!またあたしの勝ちだね!!)
(ま、まさかホントに勝てるなんて…)
(シェスのおかげだな)
(…ふふ、そうだね。なかなか楽しかったなぁ…)





END…











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