12/31の日記

21:35
お、お、お、めでとー!!
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御堂×克哉


人生において必要の無いものは、確かに存在している。
けれど、それが人生を豊かにするのだ。



愛ある人生



「ありがとうございました〜!」

コンビニのレジ袋を引っ提げ、温かい店内から外に飛び出せば、白い息が空へと昇る。
思わず、袋に入っている缶コーヒーを取り出して暖を取ると、住宅街の方へと足を向けた。
帰路を辿る足先は止まる事をせず、時おり楽しそうな声で会話する若者達の隣を通り過ぎて。

(参拝に行くのかな……。もうすぐで、年も明けるもんな)

マフラーに顔を埋めて、あと少しで到着する自宅のアパートを見遣る。
電気を消して出て来た為、暗い窓辺。
部屋の温度も低くなっているだろうなと、苦笑混じりに階段を上り、自分の部屋の前まで戻る。
玄関にある鍵穴に鍵を差し込めば、不意に思い出さない様にしていた事が頭を過った。
それには、自虐的な笑みが浮かぶが、暗い部屋に自分の誕生日を祝ってくれる者など居る筈も無かった。



ピピピと携帯でセットしていたアラームが鳴り響き、掛け布団の中から手を伸ばして、手近な所を叩く。
何度目かで携帯にヒットして、ようやく機械を掴み取り、潜り込んだ場所にてオフに出来た。
そして興味は失せたと枕元に投げ、もう一度布団に包まり直す。
けれど、途中で自分のとは違う肌色が見え、ん?とぼやけた頭が思考を始める。

「おはよう」
「……おはようございます」

爽やかな朝に相応しい台詞に、返した言葉は同じ様な台詞だ。
数秒の時間を要して思い出した事は、仕事の御用納めをした後から、彼のマンションで寝泊りをして大晦日を迎えた事で……。
同棲し始めて間もないから、何と無く泊まると言う考え方をしてしまう。

「起きれそうか?」
「……はい。なんとか」

静かに上半身を起き上がらせ、両手をベッドに付ける。
真横に寝そべる彼もまだ裸なので、ゆっくりと身体を傾けた。

「おっと…、克哉?」
「でも、もうちょっと……」
「……もう少しだけな」

頭だけを彼の胸に預けて、しばし目覚めまでの猶予を貰う。
髪を梳かれる感触が気持ち良く目を細めれば、枕元に置いた携帯が淡い光を明滅させているのに気付く。
誰かからの着信があるのをイルミネーションの光で分かり、徐に手を伸ばして携帯の画面を確認する。
着信ありと明記されたお知らせに従い、着信履歴を開けば、一番上の項目の名に首を傾げた。

「孝典さん?」
「ああ、私だ」

留守電も残されており、聞いても?と尋ねれば、どうぞと促される。
幾つかのボタン操作で留守電が再生され、音声ガイダンスの声が耳に届く。

『お預かりしている、新しいメッセージはお一つです。12月31日、午前0時00分』

耳に当てた携帯から、いつも聞いている綺麗な声が発せられ、髪を梳いていた指に自分の手を重ねる。
指を絡めて彼の顔を見上げれば、紫色の瞳は明後日の方向に視線を向けており。

『誕生日おめでとう、克哉。一番に祝いの言葉を言いたかったが……、君は寝てしまったから、ここに残そうと思う』

行為の激しさにより、12時を待たずに身体が睡眠を欲して、ベッドに沈んだ記憶がある。
その時も優しく髪を撫でられ、安心して眠りに落ちた。

『君が、この世に生まれて来てくれた事に感謝を。そして、ありがとう』
「……。君が傍に居てくれるだけで……」
「……泣くほどか?」
「なかせたのは、たかのりさんです……」

彼の胸に熱い雫が伝い落ち、瞼を閉じても熱いものが込み上げてくる。
だから、彼の胸に抱きつけば、声が小さくとも確固とした意思で言葉を返す。

オレもです。

簡単に開く癖に、冷えて暗い部屋。
そこに明かりを灯すのも簡単なのに、何処にも手を伸ばさず、寒さに震えて、何を達観していたのだろう。

『もう一度再生する場合は1を、消去する場合は9を押して下さい』

迷わずボタンを押して。何度も、何度も。
呆れられる位の祝福を胸に。

『君が傍に居てくれるだけで、私は幸せだ』



愛というのは、目に見えないが確かに存在している。
ただ目に見えないモノに対し、必要性を感じない時もあるだろう。
しかし、こんなにも人生を豊かにする。
独りでは感じる事の出来なかった程の、眩しさと温かさをもって、自分は証明する。



やっぱり、最後はキチメガで締めたいので、3時間クオリティーで克誕。ネタが湧かないのが、悪い。この脳みそめ!コンニャロメ!(自爆)

でも、何とか間に合った。間に合ってない気もするが、間に合った事にしようorz

そんな訳で、今年も皆皆様には大変お世話になりました!!

来年も、どうぞよろしくお願い致します!!

克哉さん!お誕生日、おめでと〜!!

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