ショート劇場

□飴色の月
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ベッドから起き上がると同時に、佐伯からキャンディポットを手渡された。

瓶の中には色取り取りの、小さなキャンディが詰まっている。

「・・・これは?」

「見て分からないんですか?飴ですよ」

「いや・・・。それは分かるが、なんで私に渡すんだ?」

少し傾けると、カラコロと小さい球体が転がっていく。

「バレンタインのお返しです。食べる時は、俺に言って下さい」

「ん?君に言わないと、食べれないのか?」

徐にポットを取ると、佐伯が蓋を開けて一つ取り出す。

それを何を思ったか、自分の口に含み私の唇を奪う。

「ん・・・っ」

「・・・」

小さい塊が舌の上で転がり、甘い果実の味を伝える。

1分掛けて溶かし終えると、ようやく唇を離された。

「・・・っ。・・・貴様は、普通に食べさせる気はないのか?」

「これが、俺の普通だが?それに、御堂さんからの、お返しにもなるでしょう?」

ニヤッと悪戯を仕掛けた張本人が、私からのお返しを心配する。

大体、お互いにチョコを渡したんだから、お返しは相殺だろう。

それなのに佐伯は、わざわざキャンディポットを買い

私のお返しが佐伯にキスをする事を、勝手に決めるなんて・・・。

「貴様が言う事は、言語道断だ!」

「へぇ?それなら俺に、何をくれるんですか?」

「今すぐ、菓子でも何でも、買って来てやる!」

「それならKホテルのビターキャラメルで、ヨロシクお願いします」

商品指定までされ、腹立ちながらも買いに出掛けた。
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